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2021.05.24
知財ニュース
触っている錯覚を生み出す「空中ハプティクス」—東大や村田製作所が研究開発
東京大学柏キャンパスにある篠田・牧野研究室では、「空中ハプティクス」と呼ばれる非接触で触覚を刺激する技術の研究開発が進んでいる。空中ハプティクスとは複数の超音波を空中のある1点に集め人間の皮膚でも感じられる強さにし、周波数や力の当て方を組み合わせることで多様な触覚を再現する技術。「手すりを掴んでいるような触覚」など、空中でモノを触っているかのような錯覚を皮膚に与えることができる。
これまで、空中映像と触覚の同期の効果を実証した「空中触覚タッチパネル」や、3次元映像と触覚を伴って触れ合うことができる世界初のシンメトリック・テレイグジスタンスシステム「ハプトクローン」など、空中ハプティクスの可能性についての研究や開発が進められてきた。感触の再現力は高いが、3次元映像を現実のモノのように操作する感覚を再現することが重要な課題となっている。
空中ハプティクス技術は現在、ゲームや車載機器向けの開発も進められている。
株式会社村田製作所は、2019年に、ハプティクス・ソリューション技術を提供する株式会社ミライセンスを買収。VR技術や5Gの普及により、さまざまな分野で触覚体験のニーズが高まっていることを受けて、皮膚刺激により人間に脳内錯覚を生じさせることで知的錯覚を発生させる「錯触力覚」をベースとした「3D触力覚技術」の開発を進めてきた。
ミライセンスが手掛けるハプティクス技術は、「3DHaptics」と呼ばれ、引っ張るや押すなどの「力覚」、固い・柔らかいなどの「圧覚」、ザラザラや凹凸感などの「触覚」を与えることができる。脳を錯覚させるため、従来のような大型装置は不要となり、小型化、軽量化、低価格を実現することが可能となった。
これらを実際に活用するためには、触覚を再現するための波形をデザインする必要がある。ミライセンスは、昨年10月にリアルな挙動感を直感的にデザインできるハプティクス生成ミドルウェア「PulsarSDK V1.0」の開発を発表。楽曲や効果音から自動的に感触を生成する機能や、AIを応用し直感を生成する機能などが実装されている。これによって、ゲーム開発者がコンテンツ開発に集中できる環境を提供することが可能となった。
「PulsarSDK」は、2021年3月末までに家庭用ゲーム機向け、同年中にPC向けの製品化を計画しているとのこと。その後、AR・VRや車載、医療・福祉領域などへ普及させていく予定だ。