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2024.09.05
知財ニュース
Googleが気象予測モデル「NeuralGCM」を公開―過去40年間の気温を大気モデルで正確に再現
Google Researchが地球の大気を迅速かつ効率的で正確にシミュレートできるモデル「NeuralGCM」を開発したと発表した。このモデルは、欧州中期予報センター(ECMWF)と共同で開発したとのこと。
「NeuralGCM」は、従来の物理ベースのモデリングと機械学習(ML)を組み合わせて、シミュレーションの精度と効率を向上させているのだという。現在のスタンダードな物理ベースのモデルよりも2~15日間の天気予報を正確に生成し、従来の大気モデルよりも過去40年間の気温を正確に再現することが可能だ。
同社は、「NeuralGCM」を完全な気候モデルに組み込むことはまだないが、より強力でアクセスしやすい気候モデルの開発に向けた大きな一歩だとしている。最終的には、気候がどのように変化しているかをより正確かつ実用的な方法で理解できるようになることを期待しているとのことだ。
従来の気候モデルは、地球を地表から大気圏まで広がる立方体に分割し、一定の期間に各立方体の天候に何が起こるかを予測する。この予測を行うには、物理法則に基づいて空気と水分の動きを計算していた。しかし、雲や降水量などの気候プロセスは、従来のモデルで使用されている立方体の寸法よりもはるかに小さいスケールで変化するため、物理学に基づいて計算することができなかった。
また、科学者は、雲の形成など、一部のプロセスについて物理的に完全に理解していないのだという。そのため、これらには簡略化されたモデルを使用して、「パラメタリゼーション」と呼ばれる近似値を作成し、シミュレートしていたが、この方法は気候モデルの精度を制限するものであった。
「NeuralGCM」は、従来のモデルと同様に、地球の大気を立方体に分割し、物理計算を実行する。ただし、雲の形成などの小規模な側面のシミュレートには、ニューラルネットワークを使用して、既存の気象データから学習する。
このモデルの重要な部分は、大規模プロセスの数値ソルバーを機械学習「JAX」で最初から書き直したことだ。これにより、勾配ベースの最適化を使用して、システムの動作をオンラインで調整ができるようになった。
「NeuralGCM」は、予測精度においてこれまでの最先端モデルを上回っているとのこと。具体的には、2日〜15日間の予測において、95%の確率で最先端の物理ベースモデル「ECMWF-ENS」の精度を上回っているとしている。また、1980年から2020年までの40年間の気温予測で、従来の物理ベースの大気モデルと比較すると、従来の大気モデルは平均誤差が0.75℃、「NeuralGCM」の平均誤差は、0.25℃で気候の予測においても最先端の大気モデルを上回っているともしている。
計算コストも安価で、従来の気候モデルよりも高速なのだという。計算コストが高い高解像度モデル「X-SHiELD」を比べたところ、「NeuralGCM」は、3,500倍以上高速で、計算コストが100,000倍低く、これは高性能コンピューティングの25年間の進歩に匹敵する速度の向上だとしている。
同社は、「NeuralGCM」のソースコードとモデルの重みを、非商用利用でGitHubにて公開している。他の研究者が新しい構成要素を簡単に追加して仮説をテストし、モデルの機能の改善ができるようだ。
Top Image : © Google Research