News

2023.09.08

知財ニュース

世界初、AIロボットによるリハビリで脳卒中後の麻痺手の機能改善─順天堂大ら

main

順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学 藤原俊之教授らの研究グループは、株式会社メルティンMMIとの共同研究で、世界初の「患者の意図を生体電気信号から判別し、麻痺した手を思い通りに動かすAIロボット」を用いた脳卒中リハビリテーション治療を行い、従来の手法では回復が困難であるとされていた慢性期脳卒中患者の上肢運動機能が改善したことを発表した。

この研究成果は、米国神経リハビリテーション医学会の学会誌「Neurorehabilitation and Neural Repair」誌の5月号で公開された。

sub1

脳卒中発症後に手足の麻痺などの後遺症が残る患者のうち、実用レベルまでに麻痺が回復する患者は15~20%にとどまると言われている。手の麻痺の残存は、日常生活動作を広く妨げ、職業復帰等を妨げる原因ともなる。

近年、ロボットがリハビリテーション分野でも応用されるようになってきたが、多くは患者の意図に関係なく決まった動作を繰り返し練習するものであったり、患者の動きをアシストするものであったため、重度な手の麻痺は回復が困難であった。

そこで研究グループは、自分では思うように手を動かせない重度の麻痺がある患者でも利用できる「患者の意図を生体電気信号からAIが判別し、麻痺した手を思い通りに動かすAIロボット」の開発をメルティンMMIとの共同研究で行なってきた。

同研究には、脳卒中発症後2か月以上経過した後に手の麻痺が残存している患者20名が参加。脳卒中後の手の麻痺のリハビリテーションに用い、その効果を無作為化比較試験で検証した。

AIロボットは麻痺した前腕に3対の電極を置き、脳から手に送られる電気信号のパターンをAIが解析する。これにより重度な麻痺で手が動かない患者においても、患者が「指を伸ばそう」としているのか、「曲げよう」としているのか、それとも力を入れないように「リラックスさせよう」としているのかを読み取り、患者の意図に合わせて麻痺した手を動かすという。

参加者は無作為にAIロボット群と他動ロボット群に振り分けられ、AIロボット群では1回40分/週2回、合計10回、AIロボットを使用して、自分の意図に合わせて指の曲げ伸ばしを行い、物を掴んだり、移動させる麻痺手のトレーニングを実施。他動ロボット群では、他動的に指の曲げ伸ばしを行う麻痺手のトレーニングを同様の回数行った。

その結果、AIロボット群ではトレーニング後に上肢運動機能の改善が認められ、その効果はリハビリテーション終了4週後にも維持されていた。また日常生活での麻痺手の使用頻度においても改善が認められたという。

研究グループは、今回の実験結果を踏まえ、今までの手法では回復が困難であるとされていた脳卒中後の麻痺手の回復を可能とする新しいリハビリテーション治療として期待されるとしている。

研究はすでに2022年5月18日付けで国内のクラスⅡ医療機器認証(認証番号304AIBZX00014000)を取得しており、今後の臨床での使用が望まれる。

プレスリリースはこちら

Top Image : ©順天堂大学

広告