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2021.06.24
知財ニュース
タイガー魔法瓶が開発した真空二重断熱容器が宇宙へ─ISSの実験サンプルを地上に回収
タイガー魔法瓶株式会社が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と株式会社テクノソルバと共同開発した「真空二重構造断熱・保温輸送容器」が、SpaceXの宇宙船「ドラゴン22号機」に搭載され、日本時間6月4日2時29分(米国東部夏時間3日13時29分)に米フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターより打ち上げられた。
「真空二重構造断熱・保温輸送容器」は、宇宙実験サンプルを保冷状態で格納するもの。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で実施される、タンパク質結晶生成実験で結晶化したタンパク質サンプルを地上へと回収するために、宇宙から地上への輸送中の長期温度維持という重要な役割を担っている。
タイガー魔法瓶株式会社は、2018年11月、ISSから実験試料を地球へと回収する技術実証において、宇宙ステーション補給機「こうのとり7号機」が運ぶ小型回収カプセル内に搭載された真空二重断熱容器をJAXAと共同開発していた。高精度の保冷技術を活用することで「容器内の実験サンプルを4日間以上にわたって4℃±2℃に維持する」「カプセルが着水時に受ける40Gの衝撃に耐える」などの条件をクリアし、実験サンプルとともに無事地球へと帰還した。
今回のプロジェクトは、第2のフェーズとして、新たな保冷性能条件や容器再利用という要求事項を満たした真空二重断熱容器の開発をJAXAより依頼されたことによりスタートした。「恒温での輸送が必要なタンパク質サンプルを12日間以上わたって20度±2度に保つ」という厳しい条件を求められるものだが、複数回にわたる温度実験を経て完成に至った。
今回新たに設定された3つの要求事項は以下の通りだ。
①厳格なまでの保冷温度管理
打ち上げからISSまでの実験試料の温度維持のため、保冷剤を同梱することで20℃±2℃を12日間以上保つ。ISSから地上に回収するまでの期間も、20℃±2℃で7.5日以上保つ。②複数回利用に耐え得る設計
長期的な利用を想定し、1回限りの使い切りではなく、3年以上または6回以上の再利用を可能にする。③大幅な軽量化・サイズダウン
真空断熱技術による高性能な保冷機能を保ちながら、容器の質量を3.16キロ以下と容器サイズをコンパクトに製作する。
(タイガー魔法瓶株式会社公式HPより引用)
今回開発された真空二重断熱容器(左)と、2018年納品の真空二重断熱容器(右)との比較
また、本プロジェクトの特設サイトがオープンし、プロジェクトの詳細やこれまでの歩みなどが公開された。業界の識者からのコメント第1弾として、宇宙物理学者ポール・サター氏のインタビューも掲載されている。
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Top Image : ©タイガー魔法瓶株式会社