Pickup

2023.11.24

コラム | 特許文献を愛でる

「餃子の残皮を再利用する製造装置」トーセー工業株式会社

トーセー工業 株式会社

コラム01b2

餃子皮を製造する際、なるべく無駄を出ないようにするアイデアとして、「六角形の餃子の皮」がXで話題になりました。そこで、知財ハンター・Uchidaさんが特許を調べた結果、実は1980年代に、紀文が特許を取得していることが分かりました。

これはとても良いアイデアだと思います。ただ、2023年現在、実際に六角形の餃子の皮が流通しているのを見たことがありません。実現できていない理由が何かあるのでしょうか。そうなのであれば、残皮が出ることを前提に、その残皮を有効活用する方向のアイデアが気になりますよね。そこで、特許データベースであるPatentfield(https://patentfield.com)を使って、下記のような検索を行いました。

image5

この検索式は、下記の条件1と条件2の積集合を意味しており、2023年11月4日時点で22件ヒットしました。

・条件1:名称・要約・請求項に「餃子」と「皮」が含まれていること
・条件2:名称・要約・請求項に「残」と「余」のいずれかが含まれていること

この中に、まさに意図に合った特許があったので、2つほど紹介します。どちらもトーセー工業株式会社(http://www.tosei.biz/)という餃子製造機械の専門企業の特許です。

① JP7076841B:餃子成形機における残皮還元機構(2020年出願、2022年登録)

https://patentfield.com/patents/JP2020219065A#/

image2 特許7076841

この特許は、餃子皮を製造する際に出てしまう残皮を、再利用する製造装置を提案しています。残皮を再利用すると、製造コストを抑えることができますが、うまく工夫しないと食感や食味が低下するという課題もあるそうです。この特許では、そのような課題も抑制し、品質を維持できる装置を提案しています。

特許に記載されている「解決手段」を参考に、この装置の仕組みをフローチャート化してみました。「型抜き後の残皮を、半練り状の麺皮原料と合わせて圧縮し、三層構造の麺皮として再利用する」という還元機構がポイントとなっています。

image4

② JP7265286B:餃子成形機における残皮の切断還元装置(2021年出願、2023年登録)

https://patentfield.com/patents/JP2021212897A#/

この特許についても、装置の仕組みをフローチャート化してみました。基本的には前述の特許と類似していますが、黄色ブロック部分が異なります。こちらは「残皮を切断して、半練り状の麺皮原料と混合し、圧縮して一層構造の麺帯を製造する」という仕組みです。

image3

どちらの特許も効果としては、「残り材料による食感、食味の低下を抑制してバラツキのない品質を維持することができる」と述べられています。特許文面だけでは、なかなか食感・食味のイメージが沸かないため、各機構で製造された皮を使った餃子を食べ比べてしてみたいですね。

ちなみに、トーセー工業の製品紹介ページ見ると、まさに特許図面に似た製品が紹介されています(http://www.tosei.biz/shousai-g-3.html)。「成形機での残皮は、TS-N型機側へ戻され、新麺と複合され再還元されます。」という説明があるため、今回紹介したような特許技術が活用されていると推察できます。

image1

こういった製造装置を導入できる規模の会社であれば、餃子の残皮問題を解決する手段として注目されてはいかがでしょうか。東京都杉並区にある本社には、ショールームも併設されており、実際の生産ラインを見ることができるそうです。

このように、餃子の残皮問題を解決するために、様々なアイデアが生み出され、技術開発も進められています。これは餃子の残皮だけでなく、あらゆる食品分野で、製造ロスを低減させるための技術開発が取り組まれていると思います。そのような努力やアイデアが垣間見えることも、特許情報の面白さなのではないでしょうか。

参考情報
特許7076841

特許7265286

ライティング:林 尚芳(hayataka)
X(旧Twitter)はこちら

広告