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2020.01.12

コラム | 知財図鑑コラム

発案者と活用者、断絶のワケ

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よいアイディアは活用されるほど発展し、発案者と活用者の双方に利益をもたらします。

発案者にとっては、特許がある場合は金銭的収益が得られるのはもちろんのこと、活用されることでデータが集まったり改善点が発見されたり、進化へのヒントが得られます。

活用者にとっては、車輪の再発明をすることなく、迅速に安定したスタートアップができたり、事業をランニングしていく道中でも技術のブラッシュアップをアウトソースできるというメリットがあります。

例えば元スポーツ選手がジムをオープンさせるにあたって、プロテインそのものを開発しようとなると、相当な時間的・金銭的初期投資が必要になるだけでなく、いいものが完成するかどうかリスクが大きいです。

こういった一般論は誰もが理解しやすいものですが、せっかく発案された知財が、活用すべき人に届かず、双方にとって大きな機会損失が生まれている状況が多発していると考えています。

この記事では、主だった理由を整理していきます。

発表が活用サイドに届かない場所で行われている

ビジネスの世界では、事業と広報・広告の機能が隣り合わせで活動し、成果発表の場はマスメディア・デジタルメディアに広がります。

- 記者発表会・プレスリリース
- CMなどの広告
- Webサイト等のオンラインメディア
- イベントなど生活者がタッチできる場
- SNSや動画コンテンツ
etc

一方でアカデミックの世界で発表の場は、専門性が重視されます。

- 学会での発表
- 論文をWeb上で公開
- ソースコードをGitHub等で公開
- 専門誌での露出
- オープンハウスや専門的な見本市
etc

つまり、アカデミックな領域にいる研究者や開発者は発信活動を行なっていないわけではなく、商品やサービスなどを開発する事業企画者やクリエイターがアンテナに届かない構造になっていると言えます。

もちろん積極的に成果発表を推進している研究者・開発者も存在していますが、「論文の本数」「特許の本数」「学会発表の回数」が研究者にとってのKPIなっているケースが多いため、上記のような情報のすれ違いが起こっているとも考えられます。

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研究組織の投資改修サイクルが事業会社ほど速くない

事業やサービス、マーケティング活動においては成果が性急に求められます。デジタル化が進んできたことにより「広告を投下した数分後のユーザー行動データ」を分析することすら当たり前になってきています。当然、その成果は月次や四半期、一年といったサイクルで評価され、継続性を問われます。

一方でアカデミックな業界では、発案したアイディアが30年後に活用されるといったケースも少なくありません。とくに医薬品など研究難易度の高い領域では、新卒入社以来取り組んでいた研究が結論を迎える前に定年退職することもありえます。つまり研究者・開発者は「今年の成果と向き合っていない」ケースが多々あります。

そのため研究の途中経過や副産物は、よけいに活用サイドが目にするメディアに現れにくいと考えられます。

また、ここにも大きな機会損失があります。

研究者・開発者が意図していない活用方法が発案される可能性が生まれにくいという点です。本来の研究目的から逸脱したアイディアは、まったく利害関係のない人から飛び出ることもあるでしょう。

発案サイドと活用サイドの階層的距離

年間数千億円を超える研究開発費を計上する企業体には、研究機関である親会社の知財を利用して、事業者である子会社が世の中にサービス提供している例が少なくありません。(例_ 親:日本電信電話 子:NTT東日本、NTT西日本、docomo、NTTコミュニケーションズ・・・)

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親会社が生み出した大量の知財は、オープンハウス等の機会をもって子会社のメンバーにも周知されますが、やはりそこでも情報のマッチングは確率的になりがちで、運悪くマッチングされなかった知財は生活者や、生活者を観察する活用サイドのプレイヤーに届くチャンスを失ってしまいます。

【解釈の壁】アカデミックな言語は難しい

そして運よく活用サイドのプレイヤーが知財の情報にたどり着いた時、そこには「解釈の壁」が現れます。

多くのケースで知財は、以下のようなフォーマットにまとめられています。

- 論文(英語であることもしばしば)
- 要旨資料
- 特許情報

せっかく気になる情報にたどり着けた事業企画者が、アカデミックな書き方の作法に追いつけず、解釈ができなかったり、活用イメージを膨らませることなく断念してしまうのは、大きな機会損失です。

知財を「ライトにオープン化」する習慣を

知財図鑑は、発案サイド・活用サイド双方の機会損失を減らすために、知財の活用を促進します。

そのため論文や学会資料とは違い、正確性・網羅性よりも「活用イメージを想像しやすいか」を意識した編集となっております。

何がすごいのか?(3行まとめ)
なぜ生まれたのか?(背景)
なぜできるのか?(仕組み)
相性のいい分野(活用のトス)
妄想プロジェクト(活用の自由さを提示)
実現プロジェクト(先駆者の紹介)
知財情報(研究者・開発者の紹介)

(例:まるで青空のようなLED照明 / CoeLux

掲載内容は活用サイドである「非研究者」に読みやすい構造となっていますので、ぜひ楽しみながらご覧ください。

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