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2022.04.20
IPランドスケープとは?【だれでもわかるチザイ用語辞典】
IPランドスケープとは?
「IPランドスケープ」とは、「Intellectual Property(知的財産)」と、「Landscape(景観)」を組み合わせた造語で、一般的には「自社や競合他社の知財情報および市場を分析し、経営戦略や事業戦略に活用することやその手法」という意味で使われています。
「IPランドスケープ」には、特に特許情報が活用されます。例えば特許情報に基づいて「パテントマップ」を作成し、ある技術分野や競合他社の出願動向を俯瞰することで、事業戦略等の意思決定の一助とすることができるためです。特許情報は、一部のマーケット情報などとは異なり無料で取得することができ、5W2Hに合わせて活用しやすいのが特徴です
(各種特許情報と5W2Hの例)
・When:出願日
・Where:出願国、研究拠点
・Why:出願日や内容等に基づいて総合的に検討
・Who:発明者、出願人
・What:発明
・How:発明
・How much:出願数、発明者数
具体的には、例えば下記のような流れで行われます。
特許情報の扱いに慣れた知財人材が主体となりパテントマップなどを作成し、競合他社の特許出願状況を分析
分析結果を関係各位と共有し、自社にとって有益な情報を模索
現状の俯瞰や将来の展望を経営陣らへ報告
海外では以前から「IPランドスケープ」に近い意味合いの言葉で「パテントランドスケープ」が知られていましたが、日本では2017年頃から活発化。2020年には、トヨタ自動車や旭化成、ブリヂストンといった企業が主体となって「IPL推進協議会」が発足し、日本企業へのIPランドスケープの定着を促進しています。
なお、特許庁では、企業の知財人材に関する実務能力を明確化・体系化した指標として、「知財人材スキル標準」を公表しています。詳しくは下記リンク先をご参照ください。
IPランドスケープが関わるケース
IPランドスケープが必要となるケースは、下記のような場合が挙げられます。
自社のコア技術をもとに新規事業や新製品の開発を行う場合
スタートアップ企業がピボット(事業の変更)を行う場合
協働相手(大手企業や大学等)を探索する場合
例えば、自社に不足している技術について、当該技術を保有している会社を特許情報から探すことができます。顧客への提供価値の実現にあたり、「技術」が肝となるビジネス分野の場合
技術が肝となる分野においては、活用に値する特許情報が豊富に存在するためです。
IPランドスケープの具体例
旭化成 株式会社
旭化成では、「IPL de Connect」と銘打ち、事業強化のための解析とそのフィードバックを知財部と事業部で複数回行い、最終的に解析結果を経営陣に報告。単に解析結果を経営陣に送るのではなく、事業部と知財部、経営陣とを「Connect」するツールとして、IPランドスケープを実行しています。
「新たな価値提供分野提供におけるIPランドスケープの貢献ーCOVID-19による非連続で不可逆な構造変化の先読みー」 より引用
ところで旭化成は、産業材からキッチン用品、そして住宅まで、人々の生活に欠かせない商品を幅広く手掛ける企業です。本活動を通じて新たなビジネスが生まれれば、私達一般消費者にとって嬉しい商品の誕生が期待できますね。
【参考】「新たな価値提供分野提供におけるIPランドスケープの貢献ーCOVID-19による非連続で不可逆な構造変化の先読みー」中村栄, Japio Year Book 2020
https://www.japio.or.jp/00yearbook/files/2020book/20_2_03.pdf
以下、IPランドスケープに力を入れている企業を紹介します。いずれも「IPL推進協議会」に参画している企業です。詳しくは以下ページもご覧ください。
IPL推進協議会(知的財産教育協会)
http://ip-edu.org/iplsuishin_member
株式会社 リコー
株式会社ダイセル
オムロン 株式会社
IPランドスケープにまつわるニュース
動き始めたIPランドスケープ推進協議会
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210421/mca2104210606003-n1.htm
IPランドスケープの基礎が学べる動画セミナー教材が発売
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000084469.html
金沢工業大学が実施するIPランドスケープの知財専門教育
https://digitalpr.jp/r/57908
※「IPランドスケープ」は正林真之氏による登録商標です。(商標登録第6000370号)