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2025.11.06
インタビュー | 村上 洋平×山口 大道
クライアントではなく「仲間」。ADKマーケティング・ソリューションズが、ローカルのテレビ局と対等に向き合う理由とは?
ADKマーケティング・ソリューションズ

広告代理店の枠を超えて、アニメやIP(知的財産)に精通したビジネスを展開する「ADKホールディングス」。その傘下には3つの事業会社「ADKマーケティング・ソリューションズ」「ADKクリエイティブ・ワン」「ADKエモーションズ」を擁しており、「心を動かす魅力的な体験」を創造し続けている。
なかでも「ADKマーケティング・ソリューションズ」(以下、ADK MS)は、マーケティング領域全般における統合的なソリューションをクライアントの課題発見からアイデア開発、実行までフルファネルで提供するスペシャリスト集団。そのEXデザイン本部BXデザイン局でシニア・プランニング・ディレクターを務める山口大道氏は、数多くの大手企業と伴走し、事業アイディエーションや成長戦略を導いてきた人物だ。そんな山口氏の肝いりのプロジェクトが、ローカルとの共創。すなわち地域活性化と、人材の地域格差を解消するプラットフォームの確立である。そこで白羽の矢が立ったのが、1963年に福島県最初の民間テレビ局として開局した福島テレビだった。
メディアの在り方が問われる令和のいま、ADK MSがローカルのテレビ局とタッグを組む意義はどこにあるのか。そこで今回は、福島テレビ未来開発部の部長である村上洋平氏と、山口氏の対談を実施。村上氏は2006年に新卒で福島テレビに入社以来、報道部や営業部を歴任しながら福島の「いま」を県民に伝えてきた言わば叩き上げのプレイヤーである。両者の対話から、ローカルだからこそ持つパワーと、地域ならではの課題を解決するためのヒント、そしてビジネスへの活かし方が見えてきた。
福島テレビの進むべき道筋を示してくれた
―まず、お二人の出会いから教えてください。
山口
そもそものアプローチは僕からでした。以前よりテレビ局の事業開発をしたいという想いがあって、ADK MSの東北支社に声をかけていたんです。そこで紹介されたのが福島テレビだった。1年くらい前ですかね?
村上
そうですね、背景もよくわからないまま上司に呼び出されて…。弊社もECサイトを運営しているんですが、そのお悩み解決をしてくれるのかな?と思って会議室に飛び込んだら、テーブルの奥に山口さんがどーんと鎮座されていて。オーディション会場みたいでしたよ(笑)。
山口
たしかに、ちょっと空気は重かったかもしれない(笑)。
村上
ちょうど私が所属する未来開発部が立ち上がってまだ数ヶ月というタイミングで、何をやるべきか頭を抱えていた時期でもあったので、「ここはもう正直に思っていること吐き出しちゃおう!」と。ざっと1時間以上は会議していた記憶がありますね。
―具体的には、どんな会話をされたのでしょうか?
山口
いきなりビジネスのアイデアを考えるというよりも、自分たちの持っているアセットが何か?ということに気づいてもらうのが先決だと思っていたので、福島テレビが抱える課題をヒアリングさせてもらいました。課題の定義って人によって全然違いますから、まずその目線合わせが必要だと感じていたんです。
村上
僕らだけだと、ソリューションありきのアイデア出しに終始しちゃうことが多いんです。これといった方向性も見いだせないまま時間だけが過ぎていたので、山口さんには視点のズレから正してもらった感じですね。オンラインでの定例会議だけでなく、足しげく福島現地まで通ってくださって、我々の進むべき道筋を示してくれたなと。
山口
従来で言えばテレビ局と広告代理店の関係はある種の「共同パートナー」ですが、本件は違いました。ADK MSの役割は、テレビ局が新たな価値創造を実現させるためのパートナー、つまりは相棒なんです。コンサルって「助力」がベースにあると思うんですが、そうなると「お金を持ってかれる」って身構えちゃうじゃないですか?だから僕らの第一印象も、「東京から代理店の黒船がやってきたぞー!」っていうマイナススタートだった気はしてます(笑)。
言語化できないものを言語化する
―対話を重ねる中で、村上さんはどんな発見や気づきがありましたか?
村上
社内の人間同士だと、「ウチって武器ないよね」「コンテンツないよね」って話になりがちなんです。でも、山口さんは「いやいや!テレビ局であること自体が一番の武器なんですよ」と言ってくださって。失いかけていた自信を取り戻させてくれたというか。
山口
テレビ局には報道があるし、制作もあるし、営業もいるし、いわゆる企画サイドの方々もいるし、それこそバックヤードの財務も含めると大勢のスタッフがいるわけじゃないですか。そういった部署やチームを横断的にインタビューする機会を設けてもらったんです。そこから100パーセント見えることがあるからと。僕らはよく、顧客開発/事業開発をする際の検証の1手法としてインタビューを多用するんですね。それは定量的にどうこうというよりも、質的なものを求めながら自分たちの「仮説」を都度検証するっていうステップ。その中で、言語化できないものを言語化するっていうことにすごく意識を持ってやっているんです。
―そのインタビューを通して、どんな課題が浮かび上がってきたのでしょう。
山口
やっぱり、それぞれに不安を抱えていたんです。若い世代であれば、「このまま会社員を続けていいのだろうか?」という不安が漠然とあったり、中堅の方たちですと「テレビ局は今後どうなっていくべきなのか?」という悩みであったり。でもそれって言語化しにくいし、どうせ変わらないんじゃないかという諦めムードが社内に蔓延していたりもする。その事実から目をそらすのではなく、現在地を認識してもらうこと。自分たちが魅力として思っていなかったことが、実は外からはこんなにも魅力的なんだよ!っていう気づきですよね。アセットを掛け合わせ、編集的に魅力を見つけることも我々の重要な役割だと思っています。
村上
すごく鼓舞してもらった感じですよ、ホントに(笑)。僕も来年で入社20周年なんですけど、20年前からテレビ局は斜陽産業だと言われていた。インターネットやSNSの普及を含む様々な外的要因がある中で、みんな不安を感じていたのは事実です。「なんとかしなきゃ」と思っていても、一歩踏み出せない……そういう燻ぶった雰囲気があるなというのは、ここ数年は特に肌で感じていました。未来開発部はそういった状況下で立ち上がった部署でしたし、部長としての責任感やプレッシャーは感じつつも、会社もまだ方向性を考えあぐねていましたから、すごく良いタイミングで山口さんと出会えたなと実感しています。
地域課題を解決するために誕生した『アスノタクト』
―未来開発部では、「福島の人と企業を元気にするプロジェクト」と銘打った『アスノタクト』という番組を手がけていますね。これはどういった背景から誕生したのですか?
村上
福島県には、地域課題を解決することを目的にした「地域連携推進会議」という会議体があるんです。そこで「人口減少やテレビ離れが進む今だからこそ、地域課題に真正面から向き合うローカルテレビ局の存在意義が増すはずだ」という意見が上がり、番組の構想が固まっていきました。福島県内の企業にスポットを当て、トップ自らの言葉で語っていただくことで、そこで働いてみたいと思ってくれる人が増えたらいいなと。
―公式サイトでは、番組に入りきらなかったインタビューもテキストで掲載。すごく丁寧に地方企業の魅力を引き出しているなと感じました。
村上
外勤営業の人間からも、「リクルート向けの企画ないの?」と言われることが多くて。企業紹介の番組というフォーマットは他の系列局にもあったので、たしかにニーズはあるなと感じていたんです。いわゆるミニ番組――2分間の番組なんですけど、それを30秒に再編集して、CMで流そうと。で、それを地上波で流すだけじゃなくて、TVerでも流そうじゃないかと。福島県外向けにもアプローチするためのパッケージを自分たちで構築していきましたね。番組名とかタイトルロゴも、地元のコピーライターと相談して、あえてウチっぽくないイメージで書いてもらって(笑)。
山口
僕らは直接的に番組と関わっているわけではないんですが、コンテンツの構想は聞いていて、すごくいいなと。スポット(CMの枠)を売ることってテレビ局としての大きな役割だと思うんですけど、『アスノタクト』という素材が経営者とか意思決定者に近い人たちに対して、とてつもない価値を生むんだっていうことを村上さんたちも薄々気づいてましたからね。じゃあ、そういった地域課題を解決していくことの方が、自分たちが持っているアセットをフル活用できるんじゃないかなと。同時に、そこから新たな人材採用プラットフォームが生まれる兆しも感じました。
―なるほど。
山口
もちろんテレビ局ですから、人材業界のプロではない。そこで強みになってくるのが、福島テレビの社会的な信用・信頼なんですね。県内において、福テレが取材に行くとなったときに、断られることってほとんどないんですよ。むしろ感謝してもらえるというか。それも、「ウチでCM出しませんか?」というスタンスではなくて、「一緒に事業課題を解決しませんか?」というスタンスだと、経営者のみなさんも前向きに話を聞いてくれる。『アスノタクト』を通してその会社の魅力を発信・強化していくことって、実は福テレのアセットがあるからできることなんです。
―実際、番組で紹介した企業のリクルーティングにも影響は出始めていますか?
村上
そうですね、これまでCMを打ったことのない企業からも「いいね!」と言ってもらえて。やはりどの企業にとっても、リクルートに対する課題感はすごくあるみたいで。その解決に少しでも寄与できれば…という想いで、みなさん協力していただいていますね。取材は少数精鋭でやっていて、私がインタビュアー、もう一人の部員がディレクターとしてつくっています。
山口
『アスノタクト』って、取材段階からコンテンツづくりのすべてがPoC(Proof of Concept:概念実証)になっているんですよ。これこそが僕らも価値だなと思っていて。たとえば、プロトタイプをつくって市場性を検証するとなったときに、ものづくりとか、新規事業とかだと自分たちでアセットをかき集めながらやるじゃないですか?でも、『アスノタクト』の場合はこの行動自体が顧客検証のひとつになっているので、その際にスポットを打ったことのない企業からも好反応が来るというのは、そこに市場性があることの証明でしかないんです。
村上
先日、番組を見た山形の企業さんから「ウチも取材してくれませんか?」と手紙が来たんですよ。そういう県外からの直接的なリアクションというのは、20年働いてきてあまりない経験ですからびっくりしました。地方は都心部に比べてまだテレビを見てくださる人口が多いですし、発信力があるんだなと痛感しますね。企業のトップに話を聞くと、みなさんネットを使った広告とかリクルーティングにも興味は持っているんですよ。でも、ネットって参入障壁が低いから誰でも簡単にできてしまう。やはり我々はテレビの持つチカラで発信していきたいという想いがありますので、よりテレビ局の企画と親和性が高いTVerを薦めることが多いです。企業の限られた広告費を、きちんと振り分けていただくことも意識していますね。
山口
そういう試行錯誤って、ある種の仮説検証なんですよね。多くの企業が手段ありきで突き進んでしまう中で、「考える癖」をつくるっていうのは、僕らの裏テーマでもあって。HowよりもWhyとか、Whatとか、そこに意味を持たせること。それをコンサル的に上から目線で言うことはしません。一見、無駄に聞こえるような会話も、そこに意味や意義があると感じてもらえるようになったのは、こうやってコミュニケーションを重ねたからこそですよね。とにかく関係性が良いっていうのが、このプロジェクト・チームの大きな特徴でもあるかなと。
―いわゆるコンサル的なワードとして「共創」「伴走」ってよく聞きますけど、もっと距離感が近いチーム……「仲間」みたいな感じですよね。
山口
なんというか、頑張ってるのに報われない結果って僕はイヤなんですよ。やっぱり頑張ってる人にはちゃんとスポットライトが当たって輝いてほしいなと思いますし、村上さんに初めてお会いしたとき、リーダーシップをものすごく感じたんですよね。その空気感は福島テレビ内のスタッフからも感じていて、彼ならリーダーとして逃げずに、主体性を持ってやってくれるんじゃないかという期待がありました。そのやり切る力さえあれば、たとえ間違ったとしても僕らはいくらでもフォローできるんですよ。新規事業の開発なんて、リニアに行くことはまずないですから(笑)。
「声にならない声」を、人と人との間に入って編集する
―テレビ局は今後、どんな役割を担っていくと考えていますか?
村上
正直、私はまだはっきりとしたイメージを持てているわけではありません。今はきちんと人の話を聞いて、考えを深めていくということを地に足をつけてやっている状態で。実は昨日も『アスノタクト』の取材に行ってきたんですけど、2件とも人事採用の方々が立ち会ってくれて、「本当に人手不足で困っているんですよ」と。そもそものエントリー数が減っているだけでなく、内定辞退も増えているらしくて…。そういったリアルな現場の声を聞くと、それを解決してあげるのが地元メディアとしての使命でもあるのかなと思っています。
山口
「声にならない声」を、人と人との間に入って編集する行為と言いますか。それって無形資産に近いところがあるんじゃないかと思っています。報道の「伝える力」もまさにそうですよね。僕らもパブリシティの現場において報道の方々とやり取りすることがあるんですよ。そうなったときに、大体できあがったモノとかサービスを「ニュース」として取り上げるのは、よっぽどのことがない限り難しいんですよね。そこに社会的な意義があればまた別かもしれませんが。
でも、今日お話したように経営者が困っているわけですよ。地域の人も困っているわけですよ。ということは、そういった課題に報道が切り込むことって大きなアドバンテージを担うんです。単なるサービスやプロダクトの宣伝/広告ツールとしてじゃなく、報道を使ってニーズを理解してもらうこと。そして、適切な社会課題を認知してもらうこと。それってすでに信用のある地元テレビだからこそ説得力が生まれるんですよね。
村上
放送局もビジネスですから、当然、利益も考える必要があります。でも、ジャーナリズムとしてきちんと正確なニュースを届ける義務もある。今までは営業部署から「ここ行ってきてくれ」と依頼があって取材してもらう…そういった受け身の体制が多かったのですが、我々も意識を変えて、福島県内の社会課題を解決するために何ができるか?を報道部と一緒に考えて、行動に移していこうと思っています。これは山口さんたちと出会えたからこそ持てた視点でもあって、地方テレビ局にもまだまだやるべきこと、やれることはあるんだなと。
―先ほど山口さんから「彼ならリーダーとして逃げずに」という言葉がありましたが、それって信頼関係があるから言える言葉なんでしょうね。
山口
ぶっちゃけ、クライアントと思ってないですもん(笑)。「仲間」ですよね、ホントに。最近はテレビ局の志望者が減ってきているっていう課題も聞いているので、今後はテレビ局のリクルーティングにも手を付けていきたいと思っているんです。それで、まずは自分の会社からってことでADK MSの新卒の子たちに「なんで広告業界に入ったの?」ってヒアリングして。すると、「何か新しいことができるんじゃないかと思って」と答える子が少なくない。テレビも広告も斜陽産業って言われてますけど、僕らが希望を捨てちゃダメだよなあって襟を正しました。
村上
未来開発部も基本、二人だけで動いていますからね。そういう制限や制約もある中で、ローカルにいればいるほど自由にできるのかなっていうのは実感します。「ホントにいいんすか!?」っていうぐらい会社には自由にやらせてもらってますよ(笑)。
最近だと、ウチのマスコットキャラクターの「ふくたん」を外国人旅行者に買ってもらうために、台湾とチャーター便を結んでいる福島空港の営業に行きました。それって別に上司から言われたわけでも何でもなくて、「ふくたん」が可愛いから商品価値があるだろうなと思ったので自発的に動いて。そういうフットワークの軽さというか、課外活動も許しちゃう懐の深さもローカルの魅力なのかもしれませんね。
山口
そういうのも引っくるめて、我々を頼ってほしいんですよね。会社の未来を考えたら第2の村上さん、第3の村上さんみたいな主体性を持ってやれる人材を獲得していかなければいけないし、リソースマネジメントは僕らの得意領域ですから。「コンサルと企業」という関係である前に「仲間」として、一緒に成長していけたら嬉しいです。
Text・Edit:Kohei UENO/Photo:Daisuke Okamura

ADKマーケティング・ソリューションズ
マーケティング・パートナーとして企業のマーケティング活動全体を支援してビジネス成果に貢献。3つのソリューション領域が連携し合いワンルーフで統合型ソリューションを提供する。
マーケティング・パートナーとして企業のマーケティング活動全体を支援してビジネス成果に貢献。3つのソリューション領域が連携し合いワンルーフで統合型ソリューションを提供する。
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