Pickup
2021.10.26
レポート | 知財ハンターがやってみた
necomimiで日常の脳波を可視化してみた
株式会社ニューロスカイ
“脳波で動くネコミミ”として2011年に発表、翌年の商品化時には世界中で話題になった「necomimi」。当時のブームが記憶にある方も多いのではないでしょうか?その「necomimi」が今年アップデートされ販売開始したとのことで、知財図鑑も早速手に入れました。
■necomimiの仕組みは?
necomimi(ネコミミ)とは、猫耳で自分の気持ちを表現できる、脳波を用いたコミュニケーションツール。カチューシャ状の装置を頭に装着し、額と耳部分に搭載されたセンサーによって脳波を計測する仕組み。
そして内蔵センサーで脳波を読み取ることで、「リラックス」や「集中」といった脳の状態を計測し、それらを猫耳の動きと音で表現します。
具体的には、
・リラックスモード=脳波がリラックスしている(α波が多く出ている)状態だと、耳は垂れる
・集中モード=脳波が集中している(β波が多く出ている)状態だと、耳がピンと立つ
・ゾーンモード=集中とリラックスが同時に高まっている状態だと、耳を同時に左右に振る
という3パターンの脳の状態がわかるというもの。
ちなみに第1世代からのアップデートにより新necomimiにはスピーカーが搭載され、集中しているときは「ニャッ」、リラックスしていれるときは喉を鳴らす「ゴロゴロ…」など、状態に応じた効果音が流れるようになりました(これは自分の頭上の耳が見えなくても脳波の状態がわかる、便利機能でもあります)。またセンサー部分が肉球になっていたり・・・かわいい要素がいっぱいです。
■3日間necomimiをつけて生活してみた
さて、今回知財ハンターはこのnecomimiをさまざまな状況で装着し、どんな変化があるかを観察してみました。
zoom画面で確認してみたり
アイスを食べたり(集中しています)
ヨガをしてみたり(やはりリラックス状態になります)
ほかの人にも装着してもらいました。
同僚のデザイナーや
営業担当につけたり
子供につけたり
その中でわかったことが一つ。それは、
「ゾーンモードが出ない!」ということ。
仕事中や会話中、ゲーム中は集中モードになり、ヨガなど心の落ち着く場面ではリラックスモードと、ほぼ予想通りの結果になったものの、3つ目のモードである「ゾーンモード」がどうしても出ないのです。
■「ゾーンモード」になった条件は・・・?
そもそも「ゾーン」とは「中覚醒状態」と呼ばれる状態の時に起きる現象です。最もリラックスと集中のバランスがとれた「SMR波(Sensory Motor Rhythm:感覚運動リズム)」というベータ波の一種が、そのカギを握っているとのこと。(参考:DIAMOND ONLINE)
また、この脳波の状態の時に最も人間のパフォーマンスが高まるとも言われており、一流のアスリートやGoogle等の企業ではこのゾーンの状態を生み出すべく、トレーニングや瞑想プログラムなどに活用されています。つまり、今回実験したように普通に生活をしているだけではなかなか経験できない状態が「ゾーン」なのかもしれません。
ところが、ゾーン状態のセンシングをあきらめかけた観察3日目の夜、ついにその時が訪れたのです!
その瞬間がこちら。
これは子供がNintendo Switchをプレイしていた時の一コマ。なんとゲーム中に“最高のパフォーマンス”をもたらす脳波の状態でプレイしていたという意外な結果に終わりました・・・。
この結果が興味深かったため、necomimiの開発を手がける株式会社ニューロスカイ営業部の小山氏にうかがったところ、
「当社の製品では“集中”と”リラックス”の状態についてそれぞれ独自のアルゴリズムで解析しているため、厳密にはSMR波とは少々違った「ゾーン」の定義となります。necomimi の場合は装着時に「リラックスしているか?」「楽しんでいるか?」または「瞑想しているか?」という状態を維持しつつ、同時に集中すると「ゾーン=耳がバタバタと動く」状態になります。また、当社の集中アルゴリズムは、「視覚」集中が大きく寄与しますので、ゲーム画面のキャラクターに視覚&意識が集中した場合などに数値上昇が起こります。
つまり、お子様がゲームしている際は、基本「楽しくリラックスしている状態」(慣れたゲームで、忙しく思考を動かさない感じ)で、かつ画面上の何かに意識が集中したタイミングに、ゾーン状態になったのだとお察しします。
その他、ゾーンは友達同士の談笑の最中などに多く発生しますね。リラックス出来る環境がそこにある事が、ゾーン発生の秘訣と考えます。」
とのこと。なるほど納得です。この説明を聞くとゾーンはやはりとても好ましい精神状態のように感じます。日常生活の中でゾーンが出やすい状況を作りたいものですね。
ー「necomimi」という知財を“やってみた”結果ー
3日間の観察を経て「necomimi」はエンターテインメントの要素が強い知財ながら、脳波のさまざまな可能性を示唆する優れたデバイスだということがわかりました。
良かった点:
かわいらしく遊び心のあるデザインで、脳波計測のハードルを大きく下げていること
言葉や行動だけではわからない脳波による“本心”がわかり、本質的なコミュニケーションにつながること
脳波を可視化することによって、自分の精神状態を理解しコントロールするきっかけを作っていること
期待したい点:
自分が望む脳波の状態にするためのトレーニングプログラムとの連携
スポーツや仕事中に使用できるコンパクト版など、猫耳以外の形状への応用
“脳波の可視化”から生まれる今後の展開に、知財図鑑も注目していきたいと思います。以上、「necomimi」を実際に使ってみての体験レポートでした。
文:知財ハンター/丑田美奈子
この記事のタグ