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2024.04.10
レポート
セイコーウオッチ【専用すぎる腕時計展】で体験した、100人100様の個性を引き出す時計たち
セイコーウオッチによる、デザインの新たな可能性を提案するプロジェクト「power design project」の一環として、腕時計の様々な楽しさを体験できる展示会『専用すぎる腕時計展』が、原宿にあるセイコーウオッチ発信拠点・Seiko Seedにて開催されました。
「専用腕時計」の新しい提案がテーマとして開催された本展示会に、知財図鑑の知財ハンターである都 淳朗が訪れ、展示されている腕時計やその背後にあるコンセプト、クリエイターたちの思想について感じたことを写真を交えながらご紹介します。
(文:知財ハンター/都 淳朗)
かくれんぼ専用腕時計
「かくれんぼ専用ウオッチを開いた状態で、左目でカウントを確認しつつ、右目は目隠しで覆われ、楽しい音楽と共に待つ時間に集中する」(公式サイトより引用)。
鬼ごっこの鬼役のときに目を伏せて数字を数えるポーズと時計のデザインが自然と繋がっていて、これを着けるために従来は不人気である鬼役に思わず志願したくなります。ヒーローの変身ベルトのような佇まいも少年心をくすぐります。
出典:Seiko Watch Corporation
デザイナー:川村公則 / 詳しくはこちら
パタンナー専用腕時計
「ピンクッションと時計を組み合わせ、制作に役立つちょっとした機能をプラス。まち針を刺す動作で時間の目印を付けられる。」という特徴の“パタンナー専用腕時計”。
アイコニックで可愛らしく目を惹き、パタンナーにとっての新しいアイデンティティになりそうな可能性を秘めていると感じました。利き腕と反対に装着するという腕時計の性質にも相性が良さそうです。
出典:Seiko Watch Corporation
デザイナー:薄上紘太郎 / 詳しくはこちら
すき焼き専用腕時計
「食材にはそれぞれ最高の食べごろがある」というアイデア起点のもと、誰もが最高においしい「すき焼き」を味わってもらうための、美味しく食べられる数値が時計によって定量化されたという腕時計。
本展示の中で一番ターゲットがピンポイントでしたが、この時計の存在によって「すき焼き」という料理の世界の奥深さを広くアピールできる稀有な存在であると感じました。
出典:Seiko Watch Corporation
デザイナー:吉田顕 / 詳しくはこちら
パンダ好き専用腕時計
「徹底してパンダ要素に染め上げたデザイン」を謳うパンダ好き専用時計。パンダの可愛さがナチュラルに腕時計のスタイリングへ落とし込まれており、製品としてあっても一切違和感の無いものでした。パンダそのものの持つ可愛さの完成度の高さは唯一無二であることが再認識できます。
出典:Seiko Watch Corporation
デザイナー:酒井清隆 / 詳しくはこちら
マスキングテープ好き専用腕時計
マスキングテープを時計のケースにしてしまった専用腕時計。紙管内径φ30㎜ならば、テープ幅は15mm〜20mmまで容易に、着脱でき着せ替えできるのだそう。お好みのマスキングテープを時計のダイヤル周りに固定したり切り貼りしたり、自由にカスタマイズできる機構になっています。
スマートウォッチはベルトを変えることで個性を示せますが、マスキングテープそのものによって見た目を変えられるアイデアは無限の広がりがあり、きっといろいろなコミュニケーションを生む素敵なきっかけになるんだろうなと想像できました。
出典:Seiko Watch Corporation
デザイナー:檜林勇吾 / 詳しくはこちら
晴れ男専用腕時計
このプロダクトは変形することで、「影棒」が立ち上がり、日時計として時刻を指し示すことができます。時計内部に配置されている小型の「水準器」を使用し、緯度と経度に合わせ、「影棒」の影が落とすことで、“「-1.58ミリ秒、年差換算で-0.58秒」という高精度な天体本来の動きを観測する「小さな天文台」になる”といいます。
高精細なウェアラブル日時計に晴れ男専用というネーミングを着けることが、まず面白い発想でした。まるでオーパーツかのような佇まいで、時・空と自身の関係性を再考できる、ロマンあふれる腕時計でした。
出典:Seiko Watch Corporation
出典:Seiko Watch Corporation
デザイナー:石原悠 / 詳しくはこちら
両利き専用
「左右兼用」ではなく、「両利き専用」の腕時計。時計を右手に着けた時と左手に着けた時では、ダイヤルを見る角度が変化し、目に映るダイヤルの色が変化し、どちらの向きからも文字盤の文字や略字が見える腕時計。
着ける腕によって色が変わる腕時計というアイデアは、私自身がクロスドミナンスのため、常識を飛び越えた発想をするためのきっかけになる存在だと強く共感することができました。
出典:Seiko Watch Corporation
デザイナー:伊東絢人 / 詳しくはこちら
総括
本展示を通じて、これだけのユニークな“◯◯専用腕時計”たちが並ぶことで、腕時計というプロダクトが人によって様々な意味や役割があることを改めて再認識しました。100人いれば100人全員が違う専用腕時計を付けているような未来はきっと豊かで、いろんな楽しみごとがある素晴らしい世界になっているでしょう。そんな光景を妄想させてくれる、ある意味スペキュラティブな展示でした。
そして僕自身、もし「専用すぎる腕時計」を持つならば、ただ時間を告げるだけでなく、ビートに合わせて振動し、踊り手の心拍数やステップ数を追跡し、踊りのパフォーマンスを最適化するような、「阿波おどり専用腕時計」が欲しいなと、想像をかき立てられる展示会でした。腕時計が単に時間を知らせるツールであることを超え、ユーザーのライフスタイルに密接に結びついたパーソナライズされたデバイスであると感じさせられました。
専用すぎる腕時計展
会期:1月19日(金)~3月31日(日)11:00-20:00
会場:Seiko Seed 東京都渋谷区神宮前 1-14-30 WITH HARAJUKU 1F
主催:セイコーウオッチ株式会社
取材/知財ハンター
都 淳朗
1996年徳島県徳島市生まれ。修士(デザイン)。プロダクトデザインと材料デザインを専門にしつつ、文化や常識といった固定観念を破壊・再構築するアート制作を行う。アイデアとテクノロジーの力で、地元徳島県を始めとした地方の価値を再定義する方法を思索している。遠くにあるものよりも、身近にあるのに認識できていない面白いものを探すのが趣味。