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2022.04.15
レポート | 体験レポート
“つぶやき”をお題にしたアイデアを印刷技術で形に―「大喜利印刷プロトタイピングショー」に行ってみた
三井化学 株式会社, 株式会社 リコー
下北沢駅高架下の新名所「ミカン下北」へ
2022年3月30日にオープンした下北沢の新名所、井の頭線下北沢駅高架下の新施設「ミカン下北」。下北沢カルチャーを感じさせる物販店と人気飲食店を中心とした商業エリアに、「遊ぶように働く」を体現するワークプレイスが同居したAからEまでの5街区から構成される大規模施設です。
4月2日~3日には開業イベント「未完祭」が開催され、リアルとオンラインを横断した実験的なコンテンツがミカン下北や公式YouTubeチャンネルで実施・配信されました。今回はその中から、印刷技術を用いてユニークなプロダクトを生み出すプロジェクト「大喜利印刷」の展示・イベントの様子をご紹介します。
Twitterの“つぶやき”から生み出される「大喜利印刷」とは?
「大喜利印刷」とは、Twitter上にてユーザーから「#大喜利印刷」と付けられて投稿された創造のプロダクトアイデアを、全国の印刷屋さんが印刷廃材とアイデアで実際につくりあげる大喜利プロジェクト。印刷機械だけではなく、日本全国に2万社以上も存在するといわれる印刷屋さんの知恵や工夫、企画力を最大限に押し出した企画です。
過去に「大喜利印刷」は、渋谷キューズでの展示や米テキサス州で開催されたテクノロジーの祭典SXSW2019にも出展するなど、国内外や各メディアで大きな反響を呼んでいます。
今回の「未完祭」では、大喜利印刷×TSUTAYA BOOKSTORE 下北沢によるプロトタイプ制作発表会を実施。ゲストを招き、制作過程から実験的なプロジェクトの全貌を紐解くトークセッションが行われました。また、これらの制作されたプロトタイプは大喜利印刷の過去の作品と併せて、TSUTAYA BOOKSTORE 下北沢にて展示・販売。お題に対して、印刷屋さんならではのクリエイティブで答えた、プロダクト展示の様子の一部をご紹介します。
【展示①】「はがせるテーブル」(有限会社 篠原紙工)
お題:「よごれてもへっちゃらなテーブルが欲しい。」
「汚れても大丈夫なテーブルが欲しい」というお題から生まれた「はがせるテーブル」。付箋のように一枚一枚剥がすことができ、汚れたらめくれば、綺麗な一面が出てきます。コーヒーなどをこぼしても意外と下まで浸食しないのだとか。お子様の落書きにもぴったりです。
【展示②】「ゴーハン英和辞典」(nakabi 株式会社)
お題:「バレずに早弁したい。」
「授業中、バレずに早弁したい」というお題から生まれた「ゴーハン英和辞典」。あらかじめくり抜かれてた弁当箱をセットするスペースに弁当を入れ、先生に見つかりそうな時は蓋をしてしまえば辞書のようにカモフラージュできるというものです。
【展示③】「パラパラまんがマシンP16号」(株式会社 ヒラヤマ)
お題:「何枚あれば“パラパラまんが”ができるんだ・・・?」
パラパラまんがは誰でも気軽に始められますが、いったい何枚まで書けば成立するのか、終わりが見えなくなると途方もない作業に思えてきてしまいます。この「パラパラまんがマシンP16型」があれば、たった16枚の紙に絵を描いてハンドルを回転させるだけで、エンドレスなパラパラまんがを楽しむことができます。
【展示④】「音をかき消す食べられるメモ帳・紙姫」(アインズ 株式会社)
お題:「会議中や授業中にお腹が鳴ったら恥ずかしい」
音をかき消す“食べられるメモ帳”「紙姫」。会議中や授業中など、「お腹が鳴りそうだけど、鳴ったら恥ずかしい」というお題から生まれました。メモ帳を開くだけで約97dBの音が発生し、身近な音をかき消すことができるほか、メモ用紙自体も食べることが可能なので「腹鳴り」がしそうな時は食べることもできます。
【展示⑤】紙ナプキンメモ帳(篠原紙工)
お題:「ファミレスの紙ナプキンにメモしちゃう。」
ファミレスなどに置いてある紙ナプキンをメモがわりに使っちゃう、というつぶやきから生まれたプロダクト。ナプキンならではの多少のペンのひっかかりもクセになる書き心地なんだとか。大喜利印刷ではノート(プレーン・山型)、メモパッド、スタンド型補充ケースを開発、1枚ずつ剥がす瞬間のペリペリ感も魅力の一つです。
「大喜利印刷プロトタイピングショー」が開催、見逃し配信もあり
4月3日の未完祭では、印刷の最新技術を用いた新作の発表会イベント「大喜利印刷プロトタイピングショー」があるというので、配信現場にお邪魔しました。やついいちろうさんをMCに、寄せられたお題を解決するクリエイティブな印刷技術とアイデアについてディスカッションが行われました。「大喜利印刷プロトタイピングショー」はYouTubeでも生配信され、アーカイブ視聴も可能です。ここでは、番組内で紹介された技術とそのプロトタイプの一部をご紹介します。
右から、未完祭TV総合MC やついいちろう氏、東京巧版社専務取締役 村井雄大氏、篠原紙工代表取締役 篠原慶丞氏、カルチュア・コンビニエンス・クラブ 浦山清彦氏、知財図鑑/Konel代表 出村光世氏、福島彩乃氏
あえて日に焼けやすい本? 錆びる本?
日焼けしやすい紙を使った本
日焼けした本のイメージ
今回、TSUTAYA BOOKSTOREから大喜利印刷に寄せられたお題は、「紫外線による日焼けで紙が変色してしまうので、窓際に本が置けない」という悩み。そこで、経年変化を逆手に取り、逆に日に焼けやすい紙で製本し、売り場の陳列で唯一無二を生み出したり、経年変化を楽しんでみては? というアイデアのもと、日に焼けやすい本が制作されました。今は真っ白ですが、日に焼けていくと、参考に見せていただいた本かそれ以上に日に焼けた変化を楽しめる本ができあがるのだとか。また、番組の中では、日に焼けるとグレーの紙地が白くなる本も紹介されました。詳しくはこちら(未完祭TV 2日目 20:51)
また、別のアプローチで「あえて本を錆びさせる」というアイデアも。東京藝術大学の卒業制作図録の「隕石に包まれた本が何百年何千年の時を経て手元に届いた」というコンセプトから、篠原さんは、黒い紙に元々含まれる墨の成分と、箔に含まれる金属成分が反応することで箔押し部分を徐々に錆びさせる手法を考案しました。こちらも経年変化をあえて逆手に取った表現です。詳しくはこちら(未完祭TV 2日目 33:21)
番組後半では、印刷と紫外線にまつわる最新技術が実際のプロダクトの実演とともに紹介されました。紫外線に当たったところの色が変化し、時間が経つと元に戻る、蓄光の機能を備えた、三井化学による最新技術「フォトクロミック技術」は、紙への用途のほか洋服のボタンに用いられるなど、紙と印刷の垣根を超えて導入が始まっているとのことです。詳しくはこちら(未完祭TV 2日目 36:30)
リコーによる機能性トナー技術「インビジブルレッド」は、通常の印刷トナーに加えて使用でき、通常光下では無職透明ながら、紫外線ライトを照射すると、紫外線に当たったところが赤く蛍光発色するというもの。クリエイティブ表現への活用のほか、印刷物のセキュリティとしても使用でき、印刷の表現力を高め、印刷価値の向上に貢献します。詳しくはこちら(未完祭TV 2日目 38:00)
以上、紙と印刷の表現にとどまらないアイデアを実際に展示会場で体験したり、YouTube番組で制作の背景や「大喜利」の過程が味わえるイベントとなっていました。
つぶやきのお題を元に印刷屋さんがプロダクトで「大喜利」形式で応え、アイデアやコラボレーションの生まれる「大喜利印刷」。大喜利のお題は随時募集中で、展示・販売イベントは5月9日までミカン下北 TSUTAYA BOOKSTOREで開催中です。ぜひ「ミカン下北」に足を運んでみたり、公式YouTube配信をチェックしてみてはいかがでしょうか。
大喜利印刷 プロトタイピングショー 詳細
名称:大喜利印刷 in TSUTAYA BOOKSTORE
会期:2022年3月30日(水)- 2022年5月9日(月)9:00〜22:00
会場:東京都世田谷区北沢 2-11-15 ミカン下北 A街区 208-301(下北沢駅東口より徒歩1分)
入場料:無料
主催:全日本印刷工業組合連合会
大喜利印刷プロトタイピングショー 見逃しYouTube配信はこちら
文:知財ハンター/福島 由香