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2026.05.14

レポート

AIと切り拓く、四種四様のいい未来──「Blooming DRIVE with Konel ~AI for Good Future~」最終ピッチから見えた可能性とは

さくらインターネット 株式会社

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去る3月4日、さくらインターネット東京支社にて、AI特化型アクセラレータプログラム「Blooming DRIVE with Konel」の最終ピッチおよび授賞式が開催された。Konelとさくらインターネットが共同で立ち上げた本プログラムは、「AI for Good Future」をテーマに、AIを活用して社会課題に向き合うプロジェクトを約3ヶ月にわたって育成。2025年11月のキックオフ、12月の中間セッション、翌年1月の最終セッションを経て、この日は全4チームが最終ピッチの舞台へと臨んだ。

審査を担当したのは、さくらインターネットCISO兼CIOの江草陽太氏と、Konel/知財図鑑の代表取締役CEOを務める出村光世氏の2名。「社会的インパクト」「AI for Good Futureとの親和性」「テクニカルチャレンジ」という3つの評価軸をもとにジャッジが行われた。

AIが照らした4つの未来

WELLSHIP|濵田航

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海運業界の慢性的な人手不足と、高齢化──そんな構造的課題に切り込んだのが、「WELLSHIP」である。AIを活用した献立生成から食材調達までを一貫して支援するシステムを開発し、実際の船舶での実証も経てUIも完成。青森市と函館市を約4時間で結ぶ、「青函フェリー」の船員に食事提供業務を行っているという。

江草氏からは「1度の航海で乗組員11名が数日から1週間以上を共にする環境は、食事のQOLが直接メンタルに影響する」という声があがり、出村氏からは「船舶に限らず、社食など集団飲食の場全体に応用できる可能性があるのでは」とスケールへの期待が寄せられた。

KIMIKOMA|ChoQan

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ブラジル出身で元マンガ家志望という、異色のバックグラウンドを持つニュートン・フィーリョ氏が率いるChoQanは、AIを活用したマンガ・物語生成プラットフォーム「KIMIKOMA」を発表。「創作は情熱だけじゃない」という問いかけから始まり、物語の派生・分岐やIPの拡張といったシステム設計の視点が際立った。OpenAIのプロンプトベースで物語を生成し、画像生成AIと組み合わせることで、単行本1冊分のマンガを約1時間・10ドル程度で制作できるという。「恐竜が銀行で働いて恋に落ちる」という実際の生成作品が紹介され、その描写のユニークさに会場が沸いた。

出村氏は「セリフのないマンガや4コマといったサブジャンルの可能性も面白い。超大作が生まれるためのツールになり得るか」と問いかけ、AIと人間が共創する新たな表現の拡張性について議論が広がった。

ナレッジ買い取りAIエージェント|アズビル株式会社 DS Lab.チーム

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オートメーションの老舗アズビルが挑んだのは、ベテラン技術者の暗黙知継承という根深い課題。なかでも「潜在型」と呼ばれる職人気質のベテランが持つノウハウは最も喪失されやすい。そこで開発したのが、AIとの自然な対話を通じてナレッジを「買い取る」エージェント。音声プロンプトで対話しながら即座にナレッジの価値を可視化・評価する仕組みは、「教えてよかった」という実感を生み出すモチベーション設計になっている。既にアズビル社内での展示も実施済みだ。

江草氏が買い取り評価の基準設計について問うと、「職種ごとに応用性・正確性・革新性・最新性・平易性という5つの評価軸があり、対話の積み重ねによって蓄積されていく」という回答が。出村氏はプレゼンテーションそのものの完成度と、「退職までの時限爆弾」という表現に込められた課題意識の鋭さを高く評価した。

e-lamp. ONE|株式会社e-lamp.

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慶應義塾大学発スタートアップ・e-lamp.が発表したのは、心拍数をリアルタイムで可視化するイヤリング型デバイス「e-lamp. ONE」。耳たぶの毛細血管を通じて心拍の変化を検知し、BPMが安定しているときは青や緑、高まると赤へとLEDの色が変化する。心理学と感性工学の研究を起点に生まれた、「見えない感情を光で表現する」プロダクトだ。街コンやマッチングイベントでのユースケースはすでに実証済みで、自治体・商業施設でのPoC実績は約40件にのぼる。愛媛県での婚活イベントでは、マッチング率が従来の10%から30%に向上したという結果も残している。

出村氏は将来的なマッチングアプリとの連携可能性を指摘しつつ、「アイスブレイクツールとして使うには少しもったいない。長いスパンでの心拍変化やシンクロ率のデータ分析へと発展させてほしい」と期待を語った。

【受賞結果】感情訴求とワクワク。審査員が選んだ2つのプロジェクト

260304 blooming-drive win 左から、Konel/知財図鑑の代表取締役CEO・出村光世氏と、さくらインターネットCISO兼CIOの江草陽太氏

★さくらインターネット賞 ── e-lamp.

江草氏は受賞理由についてこう語った。「マッチングから始まり、日常生活へ、そして生きがいや喜びへと直結していく可能性を感じました。テクノロジーが感情という最もプリミティブな人間の体験に寄り添う——まさにAI for Good Futureだと思います」。副賞として、後日江草氏との対談記事が制作され、「Blooming Camp」のWebサイトに掲載予定だ。

★Konel賞 ── アズビル

出村氏は「ワクワクして、自分も巻き込まれたいと思わせてくれるプロジェクトでした。職人の知恵を社会の財産として残していくというテーマは、知財図鑑の精神とも深く共鳴しています」と選出の理由を語った。副賞として、「ナレッジ買い取りAIエージェント」は知財図鑑のWebサイトに知財登録された。

驚きの数だけ、“いい未来”がある

最後に、プログラムを通じて伴走してきたメンター2人からも温かいコメントが贈られた。さくらインターネット株式会社・社長室室長の竹林正豊氏は「キックオフでは失敗こそ成長の種だ──というお話をさせていただいたんですが、今日の発表では、次につながる可能性がたくさん見えたのが嬉しかった」と感慨をにじませ、「やりたい=できる。パッションと偏愛こそがイノベーションの源泉です」と笑顔で述べた。

また、Konel CTO / テクニカル・ディレクターの荻野靖洋氏は、「会社として初めてのアクセラレータ開催でしたが、外の世界とつながっていく手応えを強く感じました。AIと築く“いい未来”の多様さに改めて驚かされましたね」と、およそ5ヶ月にわたったプログラムを振り返る。

船上の食卓、AIが紡ぐマンガ、職人の暗黙知継承、そして胸の高鳴り——4つのプロジェクトが示すのは、「AI for Good Future」の可能性がいかに広く、希望に満ちているかということだ。「Blooming DRIVE」の名の通り、この場所で花開いたプロジェクトの行方を、ぜひ見守ってほしい。


取材:知財図鑑
協力:さくらインターネット株式会社

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