No.107

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2020.03.24 Upload

素材を「テーラードデザイン」する人工タンパク質

Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)by スパイバー

Brewed Protein

概要

Brewed Protein™ (ブリュード・プロテイン)は、植物由来のバイオマスを主な原料とし、微生物発酵(ブリューイング)プロセスによりつくられる人工タンパク質素材。従来の石油を原料とする合成繊維とは異なり、地球上に豊富に存在するタンパク質を発酵させて原料を生産できるため、著しくエネルギー消費量が少なく、環境負荷が小さいことが最大の特徴。多種多様な特性や形態の材料を設計することが可能で、アパレル分野における脱マイクロプラスチックや脱アニマル、輸送分野における軽量化のニーズ等に対して大きな役割を果たすことが期待されている。

なにがすごいのか?

  • 微生物の力を活用した人工タンパク質素材

  • 衣類以外にもさまざまな素材や形態を設計することが可能

  • 石油に頼らず環境負荷が少なく、持続可能な社会の実現に貢献

なぜ生まれたのか?

新世代バイオ素材開発を行うSpiber(スパイバー)社の「環境問題が平和に直結しているという」という思いのもと、持続可能で人類に有益な素材を提供すべく開発を開始。天然のクモの糸を再現する技術「QMONOS(クモノス)」をはじめとする、15年に及ぶ研究開発を経て、遺伝子配列を目的に応じてデザインし、微⽣物による発酵プロセスでの生産方法を確立した。名称を「QMONOS」からその製造プロセスにフォーカスした「ブリュード・プロテイン」へと変え、2019年にゴールドウイン社「ザ・ノース・フェイス」とのコラボレーションで「MOON PARKA」として実用化に至った。

妄想プロジェクト 妄想プロジェクト

超サステナブル・フェス

超サステナブル・フェス

野外音楽フェスと言えば、豊かな自然の中で音楽やアートにどっぷり浸ることができる機会として、多くの人々を惹きつけてきたイベントだ。だが、会場で出るたくさんのゴミや、毎年使い捨てられるプラスチックなどのステージ道具や装飾は、LOVE&PEACEな会場の雰囲気に矛盾した虚しい影を落とす。
そこで、会場を構成する全ての要素に「Brewed Protein」を活用した音楽フェスを開催してはどうだろうか?建造物や装飾、食器などはもちろん、フェスグッズのTシャツやグッズまですべてが徹底して人工タンパク質でできていたら、自然環境に負荷が少ないサステマブルなイベントになりそうだ。伝説の1969年ウッドストック(※愛と平和、自然との共生などを主張するヒッピーら若者が約40万人集った、歴史的な野外コンサート)も羨む、理想の未来型フェスとなるに違いない。

妄想家 泊 舞香

妄想家 泊 舞香

妄想画家 其中 カズヒト

妄想画家 其中 カズヒト

実現事例 実現プロジェクト

moon

MOON PARKA

「MOON PARKA」は、ゴールドウインとSpiberにより世界で初めてブリュード・プロテイン™(人工タンパク質素材)を用いて共同開発されたアウターウェア。2015年のプロトタイプ発表後、当初の人工クモ糸を使用した製品化を断念し、微生物による発酵プロセスでの生産方法を確立。ナイロンをベンチマークにブリュード・プロテインを合成し、「THE NORTH FACE」として定める厳しい品質基準をすべてクリアしたプロダクトが生み出された。アウトドア・アパレル業界のみならず各業界の話題をさらった同商品は、現在、量産化に向けて年間500〜600トンを生産できる原料プラントの建設を進めており、2021年の本格稼働を目指している。
共同開発を続けてきた両社は、新たなコラボレーションプロジェクト「THE NORTH FACE Sp.」を始動し、「アウトドア、ファッション、アート、サイエンス、テクノロジーの境界を横断し、素材の分子配列にまでさかのぼってデザインされたプロダクトを通じて、地球と人類の未来について考えるきっかけを提供する」としている。

なぜできるのか?

遺伝子レベルで合成、発行培養

バイオインフォマティクスから遺伝子工学、合成生物学、分子生物学、発酵工学、有機化学、高分子化学、材料工学など幅広い分野にまたがる分野のトップレベルの研究者の力を結集し、人工タンパク質を遺伝子レベルで合成し、発酵培養させることで、多彩な糸やプラスチックを生産するシステムを確立した。

持続可能な新世代素材

主原料を枯渇資源である石油に頼ることなく、海洋生態系を含めた地球環境への影響が懸念されるマイクロプラスチックを生み出すこともない。また、動物由来の素材と比べ、温室効果ガスの排出量も削減でき、動物倫理の懸念もないため、持続可能な社会の実現に重要な役割を果たす。

狙った特性をデザインすることでの幅広い応用可能性

タンパク質を構成するアミノ酸の配列を用途に合わせてデザインすることで、髪の毛やシルク、カシミヤ、ウール、ファーといった多様な素材に合成することができる。また、べっ甲や水牛の角のような樹脂材料、医療用材料、次世代軽量複合材料への添加剤まで、多様なかたちに姿を変えることが可能。

相性のいい産業分野

生活・文化
  • 動物を一切傷つけず、ふわふわでリッチな質感を持つ人工ファーコート

  • 3Dプリンターと組み合わせることで実現、家庭で化学合成できるオーダーメイド・ジャケット

アート・エンターテインメント
  • 毛皮を使わずにロボットやぬいぐるみに質感を与える「リアルアニマルロボット」

  • カンガルーの気持ちになれる体験「カンガルーのポケット」

環境・エネルギー
  • 服を買うとポイントがもらえ生態系保全にも寄与できる「エコポイント・ショッピング・プラットフォーム」

  • すべてを「ブリュード・プロテイン」由来の素材で設計し、終了時にリサイクル可能な広告展示物

教育・人材

微生物を発酵するところから関わり、マイ微生物から身の回りの素材を作る教育体験

流通・モビリティ

ドアパネルやシートのクッション材などを軽量化し、環境に配慮したスーパーエコカー

住宅・不動産・建築

撥水性の皮膚、粘性を持つ糸、硬い殻といった生物の特性を持った素材による建築物

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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