知財図鑑

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No.149

2020.10.16 Upload

身近な魚から作られた生体用の強力接着剤

タラゼラチン接着剤 (ApGltn)

ApGltn
引用元: https://stock.adobe.com/

概要

タラゼラチン接着剤 (ApGltn; Alaska pollock–derived gelatin) は、スケトウダラ由来のゼラチンから作られた、生体用の強力接着剤。生体用接着剤とは、組織修復に伴い生体内分解・代謝吸収される塗布剤のことで、主には血管や患部組織の修復・閉創を目的として、外科医療の現場で適用される。現在主流な生体用接着剤は、ヒト血液成分由来であるフィブリン系接着剤と、ブタ皮膚由来であるブタゼラチン接着剤の2種類があるが、フィブリン系接着剤は臓器への接着力が弱く肺が膨らむと剥がれる例があったり、ブタゼラチン接着剤は使用前に温める手間があるなど、使い勝手の面で課題があった。タラゼラチン接着剤は、高い圧力に耐え、粘り気が少なく加温が不要であるため、現在主流の接着剤に代わる使い勝手の良い接着剤として普及することが期待されている。

スケトウダラはタラの一種。日本では食卓に並ぶことも多いため、身近に感じられるかもしれない。本来、スケトウダラは北太平洋の海に生息している。その体内成分であるタラゼラチンが、使用前に温める必要のあるブタゼラチンと違って固まりにくいのは、海の低温環境ゆえである。

なぜできるのか?

粘りを弱める「タラゼラチンの疎水化」

スケソウダラ皮膚由来のポリマー(タラゼラチン)に対して疎水基を化学修飾し、組織接着性の高い「デカノイル化タラゼラチン」を生成する。これにポリエチレングリコール系の架橋剤を添加することでポリマー同士を連結し、粘度を調整する。

剥がれにくく、圧に強い

タラゼラチン接着剤に関する研究において、ブタの摘出肺の欠損部にタラゼラチン接着剤を塗布した結果、肺表面積が2.9倍に膨らむまで剥がれなかったことが報告されている。また、別の実験結果では、タラゼラチン接着剤が高い耐圧強度を持ち、咳をする際に発生する気道内圧にも耐えられる可能性があることが示唆されている。

あっという間に接着、後始末は体の中で

患部の生体組織に貼ると5秒も経たぬ内に硬化する。接着後は生体組織の修復に伴って、生体内で分解され代謝吸収される。

相性のいい産業分野

生活・文化

イスラム教徒が外科手術を受ける際、豚を避ける戒律によりブタゼラチン接着剤の適用が禁忌である場合にも、ブタゼラチンに代わって適用できる、新たな生体組織修復法

環境・エネルギー

かまぼこの製造過程で出る廃棄物(原料であるスケトウダラの部位の内、可食部でない部位など)を活用した、フードロス削減

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