No.172
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2020.10.07
化成品の製造効率を向上させる触媒
合成繊維に金属粒子を固定する技術
概要
本知財は、合成繊維に金属粒子を固定する技術である。この技術により、化成品の合成においてフロー反応を行うのに好ましい、金属粒子が合成繊維に固定された触媒を製造することが可能となる。石油化学を除く化成品の製造において、現在主流のバッチ反応による製造は、活性炭やシリカなどの多孔質を土台として用いており、各ステップでの精製工程が必要であることや、反応後多量の廃棄物が排出されることが問題となっている。一方、本技術により製造された触媒を用いることで、より効率的、かつ廃棄物をできる限り排出しないクリーンな合成が可能となる。
なにがすごいのか?
化成品製造へのフロー反応適応に貢献
多種多様な金属粒子を合成繊維に固定可能
化学結合を介した固定により、金属粒子の安定化を実現
なぜ生まれたのか?
石油化学ではフロー反応による連続的な精製が行われている一方、医薬品をはじめとする化成品の合成においては、未だ非連続的なバッチ反応が主流である。その背景として、化成品のフロー反応による合成に好ましい触媒の供給が難しいという点があるが、荏原製作所が得意とする放射線グラフト重合を用いることで、課題であった適当な触媒の安定供給(開発)を実現した。
妄想プロジェクト 妄想プロジェクト
抗菌性の高いアイテムに囲まれた、新しい日常生活
ウイルスや細菌との接触を控えることは新しい生活様式における最大の懸念事項であり、そこへの解決手段が望まれている。そこで、身の回りの様々なアイテムに金属固定化布を適用することで、ウイルスや細菌を効率的にフィルタリングするという発想ができるのではないか。
飲⾷店の入口にかかる暖簾やスポーツ観戦時のタオルに用いて、気付かないうちに身体に付着していたウイルスや細菌を無意識の内に取り除くことが考えられる。あるいは、災害時の避難所といった不特定多数との共同生活空間における公衆衛生にも一役買うかもしれない。
なぜできるのか?
放射線グラフト重合
放射線グラフト重合は、放射線の作用を利用した化学の接ぎ木の手法である。合成繊維に放射線を照射することによって、目的の機能を持った原子の集まりを導入するための前処理として用いられている。この手法は既存の素材にその物理的特性を損なうことなく様々な性質を付与することができるため、高機能材料の開発技術として優れている。
金属粒子と親和性のある原子の集まりの導入と金属粒子の固定
前述のグラフト済み不織布を複数の薬剤と反応させることで、結合に関与していない電子対を持つ原子の集まりを導入する。金属粒子はこの部分と化学結合することで合成繊維に固定される。
土台としての合成繊維
合成繊維を土台とする触媒は、反応装置における構造的な自由度が低いことや、分散するため取り扱い性が低くいというデメリットがある粒子状触媒と比較し、取り扱いが容易である。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
・特願2020-091324
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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