No.294
2021.03.22
特定の周波数をカットする、加工自在な吸音材
iwasemi (イワセミ)
概要
iwasemi(イワセミ)とは、自然物とは異なる音響特性を持つ人工素材「音響メタマテリアル」を応用した吸音材。ステンレスやアクリルの共鳴吸音構造をコンピュータ制御でカスタマイズすることで、従来のグラスウールのような吸音材と同等の吸音性能を持たせられる。また、iwasemiは任意の周波数帯域における高い吸音率を実現するため、利用シーンやニーズに応じた吸音材の設計を支援できる。将来的には、建築材料や自動車部品などへの適用を通じて、騒音問題の解決に貢献すると期待されている。
実現事例 実現プロジェクト
iwasemi HX-α
「iwasemi HX-α」は、粘着テープなどで壁や窓、ガラスに貼れる透明樹脂製の吸音パネル。ピクシーダストテクノロジーズ社独自の音響メタマテリアル技術に、株式会社イトーキのデザイン・設計技術を融合し誕生した。透明な樹脂に吸音構造をもたらすことで、6色のカラーバリエーションと軽量化を実現。また、設計には、人の声に多く含まれる500~1000Hzの周波数帯に特化した吸音構造設計を搭載。ガラスに囲まれた空間の反響音を抑え、話しやすいクリアな空間を実現できることから、オフィス空間をはじめ、建材や什器やモビリティなどでの活用が期待されている。
なぜできるのか?
吸音周波数特性の柔軟性
一般的な吸音材は、周波数の高い音ほど吸音しやすい性質をもつ。一方でiwasemiの場合、特定の周波数帯域のみで吸音しやすくしたり、あらゆる周波数帯域で吸音しやすくしたりするなど、適用シーンに応じた吸音周波数特性を自由自在に設計できる。
高い吸音率と薄型化の両立
一般的な吸音材で吸音率を上げるには、吸音材を厚くする必要がある。一方でiwasemiの場合、多数の共鳴吸音構造を周期的に並べた基本構造を利用シーンに応じて最適化・設計することで、吸音材を厚くせずとも吸音率を上げられるため、一般的な吸音材と同等の吸音率を保ったまま薄型化を実現できる。
素材の選択自由度と加工自由度の高さ
一般的な吸音材は多孔質構造をもち、意匠性や強度が制限されやすい。一方でiwasemiの場合、共鳴構造をもち、ABS・ステンレス鋼・アクリルなどさまざまな素材で高い吸音率を実現できる。そのため、透明色を含むカラーバリエーション、表面処理によるテクスチャ表現といった意匠性を考慮した吸音材や、強度の高い吸音材を設計できる。
相性のいい産業分野
- 住宅・不動産・建築
蝶番やドアノブ(ステンレス製)に適用、開閉の際に音が漏れにくいドア
- 資源・マテリアル
カチャカチャという食器の触れ合う音が出にくい「サイレント・スプーン」
- メディア・コミュニケーション
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)流行に伴い問題視されつつある「巣ごもり騒音」解消
- アート・エンターテインメント
従来では難しかった環境でもイベントが行える「どこでもライブハウス」
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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