No.368
2021.07.13
人間を生分解し堆肥化させる埋葬方法
堆肥葬
概要
堆肥葬とは、人間の遺体を自然な形で生分解して堆肥に変え、養分として新しい命へ循環させる葬送方法。墓地に使用される土地の減少に、土葬に伴う土壌汚染、火葬による排気ガスの増加など、従来の遺体処理の方法は、環境に大きな負担を与えていた。それと比較し、遺体を分解して土にする「有機還元」による堆肥葬は、その過程における環境への影響が少ないのが特徴だ。現在は、ワシントンを始めとするアメリカの一部の州で合法化されており、今後新たな葬儀の選択肢として普及することで環境汚染の軽減と葬儀事業のクリーン化が期待されている。
なぜできるのか?
環境への負担が少ない、コンポストと同様のプロセス
死後、堆肥化のプロセスにおいて遺体はウッドチップ・アルファルファ・藁とともに専用の容器に入れられる。その後30日間かけて加熱と回転を繰り返すことで、遺体は微生物によって分解され、栄養価の高い土壌になる。火葬と比較して堆肥葬は、燃料などのエネルギーを8分の1しか使用せず、大気中に排出される二酸化炭素を一人当たり計1.4トン減らすことが可能。さらに、墓石や棺の作成とその輸送を考慮すると、土葬と比較しても同様の効果が期待できる。
堆肥は再利用可能
堆肥は、親族や友人などが受け取り、庭や家庭菜園などに利用することもできる。この際、ペースメーカーなどの金属製の不純物はコンポスト前に取り除かれ、抗生物質などの医薬品もコンポストを通して分子レベルで分解されるので、土壌を汚染する心配はない。
リーズナブルな値段設定
堆肥葬では墓地や棺桶を用意する必要がないため、葬送の費用は約60万円ほどになる。ワシントン州での土葬費用の平均が約87万円、火葬費用が約10万円〜76万円であることを考えれば、リーズナブルな値段設定で死者を弔うことができる。