No.418

2021.09.17

二酸化炭素からプラスチックを作る技術

ポリカーボネートジオール合成技術 by 大阪市立大学・東北大学・日本製鉄

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概要

大阪市立大学・東北大学・日本製鉄が開発した「ポリカーボネートジオール合成技術」とは、二酸化炭素からプラスチック等のもととなるポリカーボネートジオールを合成する技術。これまで原料とされてきた、一酸化炭素や窒息性の毒を持つホスゲンなどの有毒な化学原料を使わず、大気中の二酸化炭素を用いて、環境負荷の少ない合成を実現する。二酸化炭素を原料にした従来技術では、合成を阻む水の除去と生成量の確保が課題となっていたが、本技術では新たな触媒プロセスを開発しそれを解消した。このポリカーボネートジオール合成技術は、プラスチック原料を生成するだけでなく、リチウムイオンバッテリーを機能保全する添加剤などへも転用が可能。二酸化炭素から様々な化学品合成ルートを確立することで、地球温暖化の主要因である二酸化炭素の化学固定化に寄与すると期待される。

プロセス

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なぜできるのか?

独自開発の触媒プロセス

二酸化炭素と化合物の合成反応を活性化させる触媒として、研磨剤や日焼止めなどに使われているCeO2(酸化セリウム)を活用。CeO2を入れたガラス製の装置に大気中の二酸化炭素を吹き込み、温冷の温度変化を加えることで水を蒸発させ、ポリカーボネートジオール合成する触媒プロセスを構築した。従来技術で水の除去に用いていた脱水剤は、生成物への混入や回収・再利用などの課題があり、また合成には高圧の二酸化炭素を必要としていたのに対し、この独自の触媒プロセスでは脱水剤を使わず常圧の二酸化炭素で合成を可能にした。

二酸化炭素の活用に関する研究開発実績と知見

大阪市立大学と東北大学では以前から、排出された二酸化炭素を有用な化学物質に変換する、二酸化炭素変換用固体触媒に関する研究開発をそれぞれで実施していた。各大学とも二酸化炭素の活性化にCeO2触媒が有効であると認識していたため、本技術に活用。また技術開発は、2018年に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050」に採択された、東北大学と日本製鉄(当時は新日鐵住金)の「二酸化炭素とジオールの重合用固体触媒プロセスの開発」をベースとしている。

相性のいい産業分野

資源・マテリアル

環境負荷が低く、再生可能な資源としての二酸化炭素活用

環境・エネルギー

排出した二酸化炭素の再利用による地球温暖化の進行抑制

製造業・メーカー

工場で排出した二酸化炭素によるプラスチック製品の製造

流通・モビリティ

合成品原料としての二酸化炭素を売買するビジネスの開発

住宅・不動産・建築

人が多く集まる場所の二酸化炭素を集め再利用する、インフラの構築

アート・エンターテインメント

人が一定期間に排出する量の二酸化炭素でできたプラスチックオブジェ

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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