No.490

2021.11.11

UVで製品のテクスチャを何度も変更できるプリント技術

ChromoUpdate

CU

概要

「ChromoUpdate」とは、UV(紫外線)プロジェクターを用い、製品のテクスチャ(外観・色・風合い)を何度も変更できるプリントシステム。携帯電話のケースやマグカップなどの製品を、光の刺激で変化する光活性化染料を含んだ塗料でコーティングし、UVの照射により色や模様を変更する。従来技術では、色やデザインの変更に約20分の時間を要していたが、ChromoUpdateでは約60秒でデザインのプレビューと転送が可能。現状では滑らかで硬い表面の製品を対象としているが、Tシャツや靴など布製の製品への活用も検討中で、プロダクトの提供価値に新たな切り口を創り出すと期待される。

CU_m1 左)UVプロジェクターで照射する様子/ 右)テクスチャ指定するユーザーインターフェースのイメージ

CU_m2 (a)グレースケールでのテクスチャ反映(約60秒) / (b)現在のカラーを新しいカラーに変更する様子

なぜできるのか?

先行開発したPhotoChromeleonの技術活用

ChromoUpdateは、MITコンピュータ科学・人工知能研究所が以前開発した「PhotoChromeleon」と呼ばれる技術を活用して改良。PhotoChromeleonでは、UV LEDライトと光活性化染料を含む塗料を用いて染料の反射特性を変化させ、製品の色や外観を変更していた。しかし塗り直しの速度が遅く、塗り替えの際は、元のテクスチャを全て黒で消去してから新しいテクスチャを照射するためより時間がかかり、また部分的な塗り替えも出来なかった。ChromoUpdateはUV LEDライトではなくUVプロジェクターを用いることで、ピクセルレベル(デジタル画像などの色情報の最小単位)で局所的に光の操作を可能にしており、デザインプレビューと転送の高速化と、部分的な外観変更を実現している。

色の変更を最適化するアルゴリズムの開発

元のデザインを黒で消去してからの変更ではなく直接ターゲット色に塗り変えるために、従来の技術であるPhotoChromeleonのアルゴリズムを拡張して、専用アルゴリズムを開発。新しいChromoUpdateのアルゴリズムでは、ある色から別の色に変更するために必要な色の飽和度(純度・度合い)の増加を計算し、UV照射をどの位の時間で行えば目的色になるかを算出する。算出結果に基づきUVプロジェクターで光を局所的に制御した照射を行うことで、最短での色の変更を可能にしている。

光活性化染料の配合比率の改良

ChromoUpdateでは、コーティングを行う塗料の光活性化染料の配合比率を従来より変更。従来のPhotoChromeleonでは、色の三原色であるシアン:マゼンタ:イエローの比率を1:1:6としていたが、今回1:1:3に変更しイエローの量を削減。それにより染料比のコントラストを高め、コントラストの大きいテクスチャ反映を実現した。

テクスチャ設定を行うUIの提供

ChromoUpdateではUI(ユーザーインターフェース)を3D制作ソフト「Blender」のプラグインに実装。PhotoChromeleonのUIを機能拡張して構築した。UIで物体の3Dモデルとテクスチャを設定すると、物体の立体形状に合わせて画像を貼り付けるプロジェクションマッピングのデータを算出。デザイン変更の際は、新しいテクスチャを設定すると、既存ピクセルの色と変更後の色を比較し、変更箇所を自動的に算出する。UIではテクスチャの仕上がりイメージのプレビューも可能で、作成したテクスチャの物体への転写操作もできる。

相性のいい産業分野

製造業・メーカー

製品購入後にテクスチャ変更ができるサービスの開発・提供

流通・モビリティ

ラッピングタクシー・バス・電車などの表示広告変更に活用

生活・文化

模様や色を変更できて飽きずに長く使用できるアパレル製品の開発

旅行・観光

観光名所や旅先で獲得できるご当地製品テクスチャの提供

アート・エンターテインメント

作品がUV照射ごとに変わるアートパフォーマンスやイベントでの活用

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © MIT’s Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory