No.669
2022.04.08
脳の神経ネットワークを細密に可視化するプラットフォーム
Quicktome(クイックトーム)
概要
「Quicktome(クイックトーム)」とは、患者の脳の神経ネットワークを可視化する脳神経外科医・脳科学者向けのプラットフォーム。MRIでスキャンした脳のデータを画像処理し、約1時間で精密なコネクトーム(脳内の神経配線図)を生成、脳外科手術での脳の正確な切開をサポートする。また、「Quicktome」は、AIによる機械学習を活用することで、従来は不可能だった方法で複雑な脳の機能の解析に成功。意思決定や抽象的思考などの高次認知機能や、感情を司る部位もマッピングできる。迅速かつ正確に脳内を可視化できる技術として、脳科学研究や医療を中心に活用が期待されている。
なぜできるのか?
神経線維を詳細にモデリング
トラクトグラフィー(MRI画像から脳の神経繊維の経路を推定する方法)の生成には、従来、神経繊維を細かなボクセルごとに単一の方向のみで解析するDTI(拡散テンソル画像)という手法が用いられてきたが、「Quicktome(クイックトーム)」では、CSD(Constrained Spherical Deconvolution)という手法を活用。この手法により、ボクセル内のすべての神経繊維の方向と分布を表す値を生成し、神経繊維を追跡することで、広範囲かつ高精度のモデリングが可能となった。
独自開発の機械学習手法
「Quicktome」は、得られたトラクトグラフィーに、開発元のOmniscient Neurotechnologyが独自開発したSCA(Structural Connectivity Atlas)と呼ばれる機械学習の手法を適用。脳の形や大きさなど個人差が大きい脳の詳細なマップを生成する。
浮腫などの病変も自動で解析
最新のアルゴリズムにより、脳浮腫(脳組織の水分量が増加した状態)を自動で解析しマッピングできる。
相性のいい産業分野
- 医療・福祉
脳の部位を正確に把握し脳腫瘍や脳浮腫を的確に切除
- メディア・コミュニケーション
コネクトームを患者への病状説明で利用し、患者自身の病気に対する正しい理解を促進
- 教育・人材
コネクトームを医療教育に活用し、研修医の脳に対する知見を深化
- AI
「Quicktome(クイックトーム)」をAIのニューラルネットワークの開発に活用
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top images:© Omniscient Neurotechnology