No.754

2022.09.26

天候に左右されずに地上データを高速取得できる超小型人工衛星

QPS-SAR

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概要

「QPS-SAR」とは、夜間や天候不良時でも地表の情報をほぼリアルタイムで取得できる100㎏級の超小型人工衛星。36機を運用することで、地球上のほぼすべての場所を分解能1m(車の判別が可能な大きさ)の高解像度で撮影、画像は平均10分で取得できる。また、特定の地域を10分おきの高頻度で撮影することで、車や船舶、人、家畜といった移動体のデータも継続的に取得可能。必要な観測地点の衛星データを必要なときに取得できることから、災害時の被災状況の把握や渋滞予測、ビッグデータとの連携による未来予測など、幅広い用途での活用が期待されている。

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なぜできるのか?

「合成開口レーダー(SAR)」による地球観測

「QPS-SAR」は「合成開口レーダー(SAR)」を搭載している。これは、電磁波を地表に向けて照射し、跳ね返ってきた電磁波から地表の状態を画像化する技術で、カメラを使用して地球を撮影する一般的な衛星とは異なり、夜間や天候不良時でも観測が可能。また、道路や線路の歪みをミリ単位で検知できる。

独自開発のアンテナによる軽量化と廉価化

従来「合成開口レーダー(SAR)」を搭載した衛星は、大きなアンテナと多量の電力を要するため、1トン・2トン以上の大型のものが一般的だった。一方、「QPS-SAR」では、開発元のQPS研究所が開発した収納性に優れたアンテナにより、従来の20分の1の軽量化と、100分の1の廉価化を実現。従来の衛星に比べ低コストで大量の衛星を打ち上げられる。

大容量データの伝送を実現する「軌道上画像化装置」

「QPS-SAR」には、3号機以降「軌道上画像化装置」が導入されている。これは、JAXAとアルウェットテクノロジー株式会社が共同開発した装置で、従来は地上で行っていたデータ処理が衛星上で可能。これにより、衛星が伝送するデータを大幅に圧縮でき、海上での船舶の動向把握など、多くのデータを要する観測が可能になる。

相性のいい産業分野

官公庁・自治体

災害時に通行可能な道路を把握し救援者に通知

流通・モビリティ

自動運転車やエアモビリティのための高精細な3Dマップ

旅行・観光

リアルタイムに現地の人流や環境が可視化されたMAPサービス

農業・林業・水産業

農場の画像から作物の生育状況を推定し、将来的な市場価値を予測

環境・エネルギー

森林破壊の現状を地球規模で把握

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top images:© 株式会社 QPS研究所