No.755

2022.09.28

嘘がつけない「瞳孔の反応」から感情を可視化

瞳孔反応解析技術

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概要

「瞳孔反応解析技術」とは、瞳孔の大きさの変化から個人の興味・関心の度合いや注目度を数値化する技術。人種や性別、年齢に左右されない無意識の生体反応である瞳孔の反応を利用することで、被験者の自己申告の曖昧さや不安定さを排除した客観的な情動データを導くことができる。測定は非接触で行えるため被験者への負担も軽く、ターゲット市場や用途に合わせた判定基準を設定できることから、マーケティングリサーチやセキュリティソリューション、ストレスチェックなど、さまざまな分野での活用が期待されている。

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なにがすごいのか?

  • 明暗反応を除去、脈拍・呼吸など生体反応の影響を除去し、興味・関心による反応だけを抽出可能

  • 瞳孔径変化の結果判断に必要な基準値を有し、興味・関心のレベルを客観的に評価

  • 頭や体の一部を固定する必要がないので、被験者の負担が軽く日常に近い状態での測定が可能

なぜ生まれたのか?

興味・関心により瞳孔が拡大することは、1965年にEckhard Hess氏により証明されていたが、近年に至るまで、瞳孔径の変化を正確かつ敏速に計測・解析する手段は確立されていなかった。しかし、高精細カメラ撮影による瞳孔径計測技術の進歩とコンピューターによる解析技術により測定が簡易となり、正確でより汎用性の高い瞳孔反応解析技術が生まれた。

なぜできるのか?

視線位置と瞳孔の大きさの測定

「瞳孔反応解析技術」では、視線位置と瞳孔の大きさの変化の双方から被験者の情感を解析する。そのため、視線位置のみを計測する「アイトラッキング(視線計測)」とは異なり、動画や動くものを対象とした場合でも問題なく測定できるほか、数秒分の取得データから平均値を使用する「脳波解析」とは異なり、瞬間の反応を捉えられる。

興味・関心のみの瞳孔変化を算出

人の瞳孔径の収縮・拡大反応は、興味・関心だけでなく、視界の明暗や心拍によっても左右される。そこで、開発元の夏目綜合研究所は、瞳孔の変化から注目や興味・関心による瞳孔の反応のみを抽出できるように独自のアルゴリズムを開発。これにより、興味・関心の度合いの客観的な指標構築が可能になった。

「基準値」の設定による解析の簡便化

「瞳孔反応解析技術」では、本技術を用いたサービスに先立ち、被験者の瞳孔径の変化や瞳孔反応のレベルを67秒間計測・校正することで基準値を作成。これを用いることにより、専門性を必要としない簡便な判断基準による解析が可能となる。

相性のいい産業分野

メディア・コミュニケーション

興味関心を科学的に誘発するコマーシャルや広告ポスターの制作

官公庁・自治体

識別装置を空港に設置することで違法入国者を検知

教育・人材

オンライン授業やeスポーツにおける視線の動きや反応をセンシング

生活・文化

商品棚に設置されたセンサーでカスタマーの瞳孔の大きさの変化を測り興味関心を調査

ロボティクス

瞳孔変化からユーザーの関心度合いを測定し、適切な会話を行うAIロボット

医療・福祉

瞳孔の明暗への反応抽出から自律神経の乱れを検知

IT・通信

スマホのカメラからユーザーの瞳孔の変化を計測し、好みの相手を推測するマッチングアプリ

この知財の情報・出典

特許第6651536号

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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