No.766

2022.10.20

月や火星で長期生活するための人工重力施設

ルナグラス・マーズグラス

20220702 20221018 星くっきり 少な目

概要

「ルナグラス・マーズグラス」とは、地球と同じ1Gの重力環境を、月や火星などの低重力天体に人工的に再現できる多層階建築物の構想。巨大なグラス型施設となっており、杯の部分を回転させることで遠心力による擬似的な重力を発生する。月や火星などの低重力環境下での長期間の生活は、筋肉の衰えや骨密度の低下といった影響を及ぼすとされ、妊娠・出産や子どもの発育にも悪影響を及ぼす可能性も指摘されてきた。「ルナグラス・マーズグラス」が実現されることで、宇宙空間での長期生活における低重力の影響を最小限にとどめ、健康的な身体を維持できると期待されている。

0f19ea6f4d4d63e6f38730bfced153bf-1-768x432 火星の人工重力施設「マーズグラス」

45e791087ab888de89c9f1d2526dce1b-768x432 月の人工重力施設「ルナグラス」

なにがすごいのか?

  • 月・火星での生活基盤となる、回転する人工重力居住施設

  • 宇宙に縮小生態系を移転

  • 惑星間を移動する人工重力交通システムの構築

なぜ生まれたのか?

人類が宇宙空間で生活する未来が実現性を帯びてきている近年、NASA(アメリカ航空宇宙局)は「低重力」を人類が宇宙で生活するための重要課題と位置付けている。無重力空間に人間が長期滞在した場合、心循環器・骨・筋肉の機能は衰え、再び地球の重力環境に戻り暮らすことが困難となる。また、現在の低重力の研究は成人の身体の維持にとどまっており、子どもの誕生や成長への影響はまだ研究されていない。重力がないと哺乳類はうまく誕生できない可能性があり、誕生できても低重力では正常な発育が望めず、地球では自力で立てない体になる。そこで、回転による遠心力で地球環境同等の重力を発生できる「人工重力居住施設」が人類の宇宙生活におけるコアテクノロジー(核心技術)となると考えられ、「ルナグラス・マーズグラス」は構想された。

なぜできるのか?

回転の遠心力から重力を再現

天体の地表面に垂直に建てられた中心軸を中心に、杯型の「ルナグラス・マーズグラス」を回転させることで、遠心力を発生させる。「ルナグラス」の場合、20秒に1周のペースで回転することで1G(地球近似重力環境)をつくり出す。回転軸からの半径の大小にGの大小は比例するため、施設で暮らす人々は半径の異なる階層を選びながら暮らすことで、適切な低重力で体を慣らすことができる。

天体の重力ごとに算出されたカーブ

「ルナグラス・マーズグラス」の施設の輪郭である二次曲線部分は、それぞれ月、火星の重力から割り出された最適な形状で、ルナ・カーブ、マーズ・カーブと呼ばれる。天体の重力を算出することで、さまざまな低重力天体に対応した設計が可能になる。

惑星間の移動を可能にする「ヘキサトラック」構想

「ルナグラス・マーズグラス」の研究を推進する京都大学では、長距離移動でも1Gを保つ惑星間軌道交通システム「ヘキサトラック」を構想。これにより、惑星間の移動時に低重力による健康影響を最小限とする移動も可能となる。

宇宙空間に生態系を確立する「コアバイオーム」構想

これまでの宇宙移住計画では、空気、水、食糧、エネルギーといった人間の生存基盤の確保にのみ重点がおかれ、自然資本の移転については議論されてこなかった。そこで、京都大学では、要素を抽出した地球生態系システムを「コアバイオーム複合体」と定義し、そこから移住に必要な最低限の「選定コアバイオーム」を特定。「コアバイオーム」を「ルナグラス・マーズグラス」内で確立させることで、宇宙空間に縮小生態系を移転できる。

相性のいい産業分野

航空・宇宙

月や火星における長期滞在、地球との二拠点生活の実現

医療・福祉

人工重力を地上に応用したリハビリテーション、骨粗鬆症の防止

スポーツ

重力コントロールを応用したスポーツトレーニング

アート・エンターテインメント

重力の変化を用いた立体的なアート表現や遊具

環境・エネルギー

人工重力を応用した宇宙空間における加圧発電

農業・林業・水産業

特殊な重力環境下でしか育たない作物を地球に逆輸入

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 鹿島建設 株式会社

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