No.774
2022.11.29
皮膚に感覚を伝える、椅子型触覚提示装置
Chainy(チェイニー)
概要
「Chainy(チェイニー)」とは、背もたれや座面に埋め込まれた48個のモーター(回転接触子)が群れのように回転し、皮膚表面に捻りを加えることでユーザーに触覚情報を伝達する椅子型デバイス。身体と情報層との境界を、「身体の感覚」によって有機的につなぐインターフェイスとして開発された。音響や映像と協調したエンターテイメントやメタバースへの応用、モビリティやウェアラブルデバイスへの実装など、既存の触覚体験を拡張するデバイスとして期待されている。
なにがすごいのか?
世界初の皮膚せん断変形に基づく椅子型触覚提示装置
社会実装に向けた装置として展示用に実現
身体拡張や身体体験の支援などへの応用が可能
なぜ生まれたのか?
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)大和 秀彰副所長らは、東京大学 先端科学技術研究センター堀江 新(ほりえ あらた)特任助教らがJST ERATO 稲見自在化身体プロジェクトにおいて開発した椅子型触覚提示実験装置「TorsionCrowds(トーションクラウズ)」の基盤技術を用いて、独自の機構で軽量型の展示用装置「Chainy(チェイニー)」を開発した。
なぜできるのか?
基盤技術「TorsionCrowds」
「Chainy」の原型となった実験機「TorsionCrowds」は、背もたれや座面に複数の回転接触子(モーター)が埋め込まれ、これらが群れのように回転し、皮膚表面に同時かつ広範囲に捻りを加えることで、力の二次元的な分布を提示。この回転接触子群の回転角度や回転方向を制御すれば、体表面に生じる刺激の強度分布をダイナミックに再現可能な触覚ディスプレイになると有望視されている。
皮膚の回転せん断刺激分布提示
人の身体運動や物体との接触時に生じる皮膚のひずみの分布に着目。接触子が回転することで皮膚をせん断変形させ、その周囲のひずみエネルギーを制御。複数の接触子を並べて協調的に動作させることで任意に設計した刺激強度の分布を形成する。
チェーン設計による簡素化
実験機の「TorsionCrowds」では、回転接触子を2軸のジンバル機構によって支えられていたが、「Chainy」では金属の輪で連結して鎖化。これにより、「Chainy」がユーザーの身体に柔軟にフィットし、鎖の面でユーザーの体重を面的に分散可能になったほか、軽量化と低コスト化も実現できた。
空間的に連続な刺激の二次元分布
「Moving Phantom Sensation」という錯覚を誘発することで、離散的な刺激素子配置で連続に運動する刺激を生成。どのようにパラメータが刺激に質的な影響を及ぼすかを研究で明らかにした。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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Top Image : © 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター