No.788

2023.03.14

液体をキャンバスに変える液中描画技術

LiDR (Liquid Drawing)

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概要

「LiDR (Liquid Drawing)」とは、食品由来の描画飲料を使い、飲料をキャンバスとして文字やイラスト、3Dパターンを描き出すことができる技術。6軸ロボットアームをベースとし、描画用飲料を吐出するノズル位置、ノズル速度、吐出流量を制御することで描画プロセスを確立した。飲料を通じてメッセージを伝えたり、同じデザインの飲料を飲むことで楽しみを共有したりと、飲料を起点としたコミュニケーションと演出の可能性が広がることが期待されている。

LiDR

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なにがすごいのか?

  • 液体の中に液体で文字や図形、絵を描ける

  • 液体内に平面的にも立体的にも表現できる描画技術

  • 移動時や飲料時などグラスを動かす際も型崩れを抑える制御技術

なぜ生まれたのか?

開発を担当したサントリーグローバルイノベーションセンター株式会社の研究員が、飲料起点のコミュニケーションを模索する中で思いついたアイディアが開発のきっかけとなっている。例えば、送別会などでは主賓に感謝の花束を渡すのが定番だが、飲料を用いて感謝を伝え、それをみんなで飲んで思い出を共有する、そんな方法があってもいいのではないか。そんな思いつきから研究が始まった。研究はエンターテイメント的な発想から開始されたが、今後のパートナー連携や進展によっては、課題解決型ソリューションへの展開の可能性もある。「LiDR」は、Food/AgTechの領域で、「CES 2023 INNOVATION AWARD」に選出されている。

なぜできるのか?

独自開発した液中描画技術

3次元で作業が進めやすい6軸の自由度を持ったロボットアームをベースに、描画用飲料を吐出するノズル位置や速度、吐出流量を柔軟に制御できるシリンジ(注射筒)機構を開発し、描画プロセスを確立。その制御技術とプログラムにより、キャンバスとなる飲料中での描画用飲料が流れるリスクや、既に描画された描画用飲料が描画中のノズルと相互作用するリスクを低減させ、安定した流体3D パターンの構築が可能となる。

液中にデザインを再現する変換アルゴリズム

タブレットなどに描いたデザインを液中に素早く再現するため、独自の変換アルゴリズムを開発。1分もかからずに液中への描画が可能となる。また制御技術と組み合わせることで、液中での立体描画や、描画の保持を実現している。

天然素材とアップサイクリング

描画用飲料の原料はすべて食品素材を用いており、廃棄部分や余剰食品を素材として再利用することもできる。描画色は現在、Green(緑)/Magenta(紅)/Yellow(黄)/Black(墨)の4色を展開しており、描画表現の幅も持たせている。

相性のいい産業分野

食品・飲料

記念日のサプライズやイベントの特別メニューとして飲料サービスを提供

ロボティクス

簡単に導入・操作できメンテナンスが容易な液中描画ロボットの開発

資源・マテリアル

フードロス解決のソリューションとして活用

生活・文化

レジャー施設などで期間限定イベントと連動し液中描画をデザイン・販売

医療・福祉

入院食や介護食へ子供や孫が書いた絵を描画して提供

メディア・コミュニケーション

飲料や水槽などへの企業・ブランド広告の展開

アート・エンターテインメント

水族館や海中で楽しめる催し・ショーの開催

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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