No.798
2023.08.02
赤外光で発電する無色透明な太陽電池
透明太陽電池 by OPTMASS
概要
「透明太陽電池 by OPTMASS」とは、赤外光(赤外線)を電気エネルギーに変える無色透明な太陽電池。人の目に見えない赤外光を吸収して電力に変換しており、認知できる可視光は通すため、窓ガラスなどに用いても室内の明るさを損なわずに発電できる。赤外光は、太陽光の約半分を占める一方で捕集が困難なため、これまで発電への活用が難しかったが、独自開発したナノ粒子を用いて実現した。ビルや大規模施設の窓に設置して、地産地消の電力や災害時の予備電力として活用することに加え、通信機器・デバイス開発への展開などが期待されている。
なにがすごいのか?
捕集が難しい赤外光を発電に活用
赤外光による発電と透明性を両立
景観を損なわずに窓ガラスなどに設置可能
なぜ生まれたのか?
再生可能エネルギーの1つである太陽光は、可視光・紫外光・赤外光とで構成されており、赤外光が約半分を占めている。しかし赤外光は、可視光の赤い光の外側にあって光の波長が長く、エネルギーが小さいため捕集が困難で、これまで発電への活用が難しかった。そこでOPTMASSは、ナノメートル(1メートルの10億分の1)サイズの電子の集団振動を用いて、赤外光を電気エネルギーや信号に変換できる透過性の高いナノ粒子を独自開発。それを用いて「透明太陽電池」を実現した。
なぜできるのか?
太陽光の約半分を占める赤外光の活用
可視光に次いで太陽光に占める割合が大きい赤外光は、可視光よりも波長が長く熱効果が大きい。開発者である京都大学の坂本准教授は、その赤外光に着目。高層ビルなどの窓に集まる太陽光を発電に用いる構想を描いて、赤外光を吸収し電気エネルギーに変換するナノ粒子を開発。無色透明なガラス状の「透明太陽電池」を実現した。
独自開発のナノ粒子
入射した光が金属表面に当たると電子が一斉に振動する「表面プラズモン共鳴」。その中で、ナノメートルサイズの構造物で起こる表面プラズモン共鳴「局在表面プラズモン共鳴」の原理を用いて、ナノ粒子(スズドープ酸化インジウムナノ粒子)を開発した。ナノ粒子は、赤外域で局在表面プラズモン共鳴が起こるため、赤外光による電気エネルギーへの変換が可能。添加物の混ぜ具合により、吸収波長を制御することもできる。
ナノ粒子の高い透過性
独自開発したナノ粒子(スズドープ酸化インジウムナノ粒子)は、可視光の透過率が95%と、高い透明性を持つ。ナノ粒子は、ガラス基板上に製膜された形で可視光を95%透過させ、赤外光のみを吸収して発電する。外観は無色透明に見えるため景観を損ねずに、赤外光による発電との両立を実現している。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 株式会社 OPTMASS