No.925
2024.10.15
航空機の燃料消費とCO2排出量を減らす「サメ肌フィルム」
AeroSHARK
概要
「AeroSHARK」とは、航空機の空気抵抗を減らす機能を持つ、サメ肌のバイオニックフィルム。水中の抵抗を減らすサメの皮膚の突起構造を模倣したフィルムを作製して機体に貼り付け、空中の摩擦抵抗を抑えて、燃料消費と二酸化炭素(CO2)排出量を削減する。軽量で弾力性のある接着フィルムのため、機体を選ばずに搭載でき、またメンテナンス不要で4年以上効果を保つ。航空機運航に伴う環境負荷と運用コストを減らし、持続可能性を高めると期待されている。
なぜ生まれたのか?
独ルフトハンザグループで航空機の整備・修理などを担うLufthansa Technikと、総合化学メーカーのBASFが共同で開発した。2050年のSDGs実現に向けた、ルフトハンザグループの取り組みの1つ。2019年には、ルフトハンザドイツ航空の旅客機にフィルムを搭載して試験飛行を開始。燃料消費とCO2排出量を削減する可能性を検証し、同グループの航空機に展開した。
2024年6月時点では、17機の航空機に搭載(スイス インターナショナル エアラインズの旅客機(777-300ER) 12 機 / ルフトハンザドイツ航空の旅客機(747-400)1機、貨物機(777F)4機)。これまで10万時間以上の飛行を通して、燃料消費を6,000トン以上、CO2排出量を1万9,000トン以上削減した。1日換算のCO2排出量削減は、48トンに及ぶという。
さらにルフトハンザの貨物機7機や、オーストリア航空の旅客機4機への展開も決定。日本国内でもANAがボーイング777への搭載を決定した。フィルムを貼り付けた貨物機は2024年9月から運航を開始。2025年春ごろまでに旅客機への適用を予定している。
なぜできるのか?
微細な突起「リブレット」の開発
摩擦抵抗を抑えるサメの皮膚の仕組みを模倣し、高さ約50マイクロメートル(1ミリメートルの1/1000)の微細な鱗状の突起「リブレット」を開発。リブレットを数万個形成したパッチ状のフィルムを構築した。機体へのフィルム設置は、気流を想定して実施。機体表面下半分の約800~900平方メートルに貼り付けることで、空中の摩擦抵抗を低減できる。また、翼に取り付けると機体を押し上げる揚力の向上にもつながる。
取り付けやすくメンテナンスフリーな設計
搭載する機体を選ばず、特定の場所に貼れるよう、弾力性と接着性を持つパッチ状のフィルムを構築した。フィルムはまた、大きな温度変化・圧力差・高高度の飛行時の紫外線への耐性を持ち、航空機の運航に伴う環境変化に対応できる。1平方メートルあたりの重さは約180グラムと軽量で、機体のカラーを活かせる透明な仕様。メンテナンスの手軽さも特徴で、手作業で貼り付けた後は、洗浄や追加のメンテナンスが要らない。4年以上の長期耐久性を持つ。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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Top Image : © Lufthansa Technik