No.966
2024.12.08
迷走神経を刺激し体内バランスを整えるウェアラブルデバイス
amofit S
概要
「amofit S」とは、迷走神経を刺激して体内バランスを整えるウェアラブルデバイス。運動・知覚・副交感神経を含む迷走神経に、人体が発する磁場に似た穏やかな電磁信号を伝えて、自律神経系(ANS)のバランスを回復させる。デバイスは、首にかけるか胸付近に装着して用いる。従来の体内植込型の刺激装置や薬物治療などによる迷走神経刺激療法とは異なり、手術せず皮膚の上からのマイルドな刺激で、非侵襲的に自律機能を整えることが可能。睡眠不足解消やストレス低減、集中力・記憶力向上などの効果が得られる。今後の進展により、人のパフォーマンスを高めるだけでなく、慢性疾患の治療やアンチエイジングも可能にすると期待されている。
なぜ生まれたのか?
米イリノイ大学の科学者チームが2012年に、穏やかな電磁信号で自律神経の調整に関わる心拍間隔の周期的な変動(心拍変動・HRV)を急激に増やす、治療プロトコルを発見したことがきっかけだった。追加の臨床研究でさらに、電磁信号が自律神経系のバランスを回復し、加齢に伴う慢性疾患を治療できる可能性を確認。その研究をもとに、2016年に米国・韓国で、神経刺激プラットフォームをベースとしたバイオエレクトロニクス企業「AMO Lab」を設立した。
2017年、独自技術「cVES」のPoC(概念実証)を実施。その後、技術検証や臨床試験を重ねて効果を実証し、2019年には初期モデル「AMO+」を製品化。2022年にアップデート版である「amofit S」を開発した。製品は当初、クラウドファンディングサイト「INDIEGOGO」で展開し、1億6,000万円を超える支援を獲得。2023年よりオンラインで本格的に販売を開始した。また「amofit S」は、米国・韓国・欧州で安全性に関する国際認証を取得している。
なぜできるのか?
独自の神経刺激技術「cVES」の構築
心臓と心臓につながる迷走神経枝に複雑な電磁信号を送り、自律神経系のバランスを調節する、独自のcVES (cervicothoracic vagus electromagnetic stimulation ー頸胸迷走神経電磁刺激)を構築している。胸周辺に装着するデバイスに、電磁信号を発するコイルを搭載。デバイスの電源を入れると、人体が放射する生体電磁気に似た強度のパルス磁場を発して、迷走神経の自己調節機能を活性化する。刺激可能範囲は半径9インチ(約23㎝)。電磁信号は、衣服や皮膚・筋肉・骨を通過して、妨げられることなくターゲットの迷走神経に作用する。
迷走神経刺激の活用
脳神経の1つである迷走神経は、脳下部の延髄から出て枝分かれし、体内を複雑な経路で長く走行する。自律神経系を調整する重要な構成要素で、頸部・胸腔・腹腔内(内臓)まで広く分布して体内環境をコントロールしている。「AMO Lab」は、100年以上前から研究されてきた迷走神経刺激に着目。発展させて、手術不要で薬の服用なく、人体に害を及ぼす強い刺激もない、皮膚と非接触でも使える「amofit S」を構築した。迷走神経の電磁刺激で、副交感神経の調整や心拍数の低下・安定化、脳を活性化させるアルファ波の発生促進などができる。
生活の中で手軽に使えるデバイス設計
日常生活で自然に使える設計で、デバイスは紐で首にかけるか、背面のクリップで衣服に装着して使用できる。サイズは1.61×1.4×0.35インチ(約41×36×8.9mm)、重さは13.9gとコンパクト。体調を整え睡眠不足やストレス・不安を改善する「Calm Mode(カームモード)」と、アルファ波を増やして記憶力や創造力を高める「Focus Mode(フォーカスモード)」があり、タッチ操作でモード切替できる。最低使用時間は1日30分で、1日の使用目安は3時間。フル充電で8~9時間使用でき、オフィスや出先でも気軽に使える。健康状態や症状の重さで異なるが、通常1~30日以内で効果が得られる。身体のバランスが著しく崩れている高齢者や重度な症状がある人の事例では、1~3日以内で効果を実感できたという。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
・WO2019164076/KR 1020190101633/EP3556430/CN110392593/US 20210220663
・特許第7349243号
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。
Top Image : © Amo Lab