No.907
Tech Direction Awards受賞作品
2024.08.27
未来への跳躍を“あたらしい動き”で表現するプロジェクト
Bouncing with MOTION & CONTROL
概要
「Bouncing with MOTION & CONTROL」とは、未来に向けて飛び出す様子を「あたらしい動き」で表現するプロジェクト。独自の機械製品「モノキャリア」と制御技術で動きを精緻にコントロールし、セラミック製のボールが空中を飛ぶ・弾む・跳ねるといった躍動感のある動画を生み出した。表現する動きのアイデア出しから始め、どの製品であれば動きを創れるかなどの検討とプロトタイピングを重ね実現した。プロジェクト展開により、既存製品・技術のポテンシャルをこれまでにない切り口で見える化するとともに、活用・流用範囲を拡げると期待されている。
なぜ生まれたのか?
日本精工(NSK)が2020年から開始した、自社製品・技術力を使い「あたらしい動き」を表現する企業広告シリーズ「___ with MOTION & CONTROL」から生まれた。1916年の創業以来、同社が目指してきたのは、製品・技術を通じて世界に必要とされる「あたらしい動き」を提供すること。自動車・エアコン・飛行機・医療機器・風力発電機など、複雑でありながら精緻な動く「MOTION & CONTROL」を搭載し、生活や社会を支えてきた。
「___ with MOTION & CONTROL」では、ベアリングを用いた「Running with Motion & Control」を皮切りに、「Connecting」「Drawing」と毎年異なるテーマでプロジェクトを推進。2023年は、「Bouncing with MOTION & CONTROL」に取組み、未来に向け困難を飛び越える様を機構の動きで表現した。企画・制作にはシリーズ開始当初より、デザイン制作・事業創出支援を手がけるTakramが参画している。
なぜできるのか?
精緻な動きが可能な「モノキャリア」の活用
工作機械や半導体製造機器などに使われている「モノキャリア」を用いて、セラミック製のボールを飛ばすという立体的な動きを実現している。「モノキャリア」は、モーターなどの回転する動きをまっすぐの動きに変換するアクチュエーター(装置)で、高速で動き、狙った場所に誤差なく機械や工具を配置できる。「Bouncing with MOTION & CONTROL」では、ボールを弾ませる円状反射板の動作に利用。飛び回るボールの動きに追いつき、狙い通り正確に跳ね返す精緻な動きを再現した。
「早く雑に作る」プロトタイプ開発
プロジェクト開始時点では、玉と反射板の素材に何を使うか、玉がよく跳ねる条件は何か、どんな跳ね方が美しいのかなど、検討ポイントが多数存在した。そのためプロトタイプ開発にあたっては、「早く雑に作る」をコンセプトに、クオリティに捉われずカタチにすることを重視。「玉の集団行動」のシミュレーションなど、早く雑にアイデアをカタチにする中で、実現性や改善点をクリアにし、早い段階で玉を飛ばす実現可能性を得た。その後もプロトタイプ開発を積み重ね、高精度な本番用の機構を構築した。
エンジニアとクリエイターの共同制作
プロジェクトは、NSKの社内横断で集まったエンジニアと、Takramを始めsiro、SPLINE DESIGN HUBといったエンジニアデザインに強みを持つ企業のメンバーと共同で行った。どのような「あたらしい動き」を目指すかのアイディエーションとプロトタイピングを並行して進め、多数のアイデアから「玉を飛ばす」ことを選定。どの製品・技術であればそれが可能か・どう表現するかなどの検討を進めた。プロトタイプ・実験を経て、本番に向けた機構とそれを制御する専用ソフトウェアを開発。実際に動かして軌道調整などを行い、精緻な動きを実現した。撮影にあたっては、事前にカメラの画角やアングルなどを詳細に計画。本番では高精度カメラを使用し、機構や玉の精緻な動きを伝える映像を完成させた。
相性のいい産業分野
- アート・エンターテインメント
テーマパークや科学館などのアトラクション・展示に活用
円盤を操作し玉を狙った穴・カゴに入れるなどのゲームを企画
- 製造業・メーカー
スマート工場の部品仕分けやデリバリなどに活用
- ロボティクス
ロボットの手足となり作業をサポートする機構の開発
- スポーツ
反射神経などアスリートのパフォーマンスを高めるトレーニング機器の開発
この知財の情報・出典
・特許第5428290号
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © NSK