No.980
2024.12.10
化石ができる仕組みを応用し、岩盤の亀裂を半永久的に封止
コンクリ―ション化による亀裂シーリング
概要
「コンクリ―ション化による岩盤亀裂シーリング」とは、化石ができる仕組みを応用した岩盤の亀裂修復技術。専用のコンクリ―ション化剤を亀裂に流し込むことで、従来のセメント素材では不可能とされてきた数百年単位でのシーリング(封止)を実現する。近年、環境問題への対策から、放射性廃棄物の地下隔離や二酸化炭素の地下貯蔵における永久的なシーリングが課題になっている。そこで名古屋大学らの研究チームは、数万年以上にわたり風化せずに残ってきた「球状コンクリ―ション」(海生生物などの化石を核とした球状の岩塊)の形成メカニズムを応用、本技術を開発した。インフラのメンテナンスフリーを実現する技術として、トンネルや地盤改良など、多方面での活用が期待される。
なぜ生まれたのか?
従来、「球状コンクリ―ション」は、数十万年かけて形成されるという説が通説だった。しかし、名古屋大学の吉田英一教授らの研究グループは、内部の化石に捕食跡がない点に着目。形成が数年から数十年で急速に進んだと考え、2008年から「球状コンクリ―ション」の形成過程の解明に着手した。
そして2015年、「球状コンクリ―ション」を形成する炭酸カルシウムが、死がいから浸出した酸と海水中のカルシウムとの反応により、急速に生成されたことを確認。研究の知見を応用し、「コンクリ―ション化剤による急速シーリング」を開発した。
なぜできるのか?
強固なシーリング効果
コンクリ―ション化剤は、亀裂内で地下水と反応し、強固な炭酸カルシウムの結晶を生成。高いシーリング効果を発揮する。なお、実証実験では、岩盤亀裂の地下水透水性を100分の1~1000分の1まで低減することに成功した。
半永久的な自己修復効果
「コンクリ―ション化による岩盤亀裂シーリング」では、亀裂内で形成された炭酸カルシウムの結晶が地下水の自然由来重炭酸イオンやカルシウムイオンと反応することで、持続的に成長。半永久的なシーリング効果を実現する。なお、実証実験では、計11回の地震(M5.4の直下型地震を含む)の後も再シーリングできることを確認した。
用途に応じて使い分けできるコンクリ―ション化剤
コンクリ―ション化剤には、岩盤亀裂に直接注入できる「液体タイプ」と、セメントミルクと併用して岩盤内部の微小な亀裂に注入できる「マイクロカプセル(粒子)タイプ」の2種類があり、対象とする亀裂やシーリング範囲に応じて使い分けできる。
微細な空隙も封止する非破壊のシーリング
「コンクリ―ション化による岩盤亀裂シーリング」は、元素の拡散・沈殿によるシーリングのため、ミクロンサイズの岸壁の空隙までシーリングが可能。また、セメントの高圧注入によるシーリングとは異なり、岩盤への物理的なダメージも少ない。
相性のいい産業分野
- アート・エンターテインメント
コンクリ―ション化剤を用いた遺跡の亀裂修復
- 官公庁・自治体
コンクリ―ション化による放射性廃棄物の安全貯蔵
- 資源・マテリアル
地下水の湧出封止による地震時の液状化現象の防止
- 住宅・不動産・建築
コンクリ―ション化剤を用いたインフラの省メンテナンスの実現
- 生活・文化
コンクリ―ション化により破壊の起きにくい長期保管サービス
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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