No.900
Tech Direction Awards受賞作品
2024.08.27
デジタル技術で食感デザインを“民主化”するプロジェクト
コンピュテーショナル食感デザインプロジェクト
概要
「コンピュテーショナル食感デザインプロジェクト」とは、デジタル技術を用いて、誰でも自由に食感をデザインできる世界を目指すプロジェクト。プロトタイピングなどを重ね「食感ジェネレーター」を独自開発し、コンピューターによる食感構造の設計と3Dフードプリンターを用いた造形で、食感デザインに取り組んでいる。ポリポリ・サクサクなどのオノマトペだけでなく、「天高く馬肥ゆる秋」など自由な文章(プロンプト)を入力でき、これまでにない食感の生成を可能にしている。調理するような感覚で食感を自由にデザインできることで、食の世界を拡大・深化させ、未知の食体験を創り出すと期待されている。
なぜできるのか?
独自開発の「食感ジェネレーター」
食べたい食感を短文でプロンプト入力すると食感を生成する「食感ジェネレーター」を開発。「元気がでる食感」や「春、夜空に咲く」など、自由なプロンプトで食感を創り出す。入力プロンプトの言語処理には、OpenAIのAPIを活用。プロンプトとプルプル・カリカリなどの食感要素との類似度を評価し、食感要素パラメーターを作成・演算して、食感構造の3Dモデルデータを生成する。プロンプトと食感要素は、ディスプレイ上にマトリクスでビジュアル表示するため、食感の位置関係なども把握できる。生成したモデルデータをもとに、3Dフードプリンターで食感を再現。一定の精度で食感の内部構造を作り込めるため、口内ですぐに崩壊せず、食感を味わうことができる。
「高次素材」を探求するオープンラボ
オープンラボとして活動している有志団体「高次素材設計技術研究舎=Meta-level-material design-Engineering Learning Team(Melt.)」が、プロジェクトを牽引している。感性・技術を分け隔てなく取り扱い、クリエイティブにおける発想のジャンプをもたらすプロセスを「高次素材」と定義。思いつき・閃き・感性が生じるプロセスの言語化とモデル形成(高次素材化)を行い、プロトタイピングを通じて、設計手法の探求と一般化を目指している。「コンピュテーショナル食感デザインプロジェクト」では食感にフォーカス。3Dフードプリンターによるデジタルファブリケーション技術とコンピュテーショナルデザインを組み合わせた、新しい食感・食品生成プロセスの発明に向けて取り組んでいる。
2年以上にわたる食感デザインの研究
フードプリントを始めとする3D技術や言語処理技術・AIなどのテクノロジーを、食感という感性的な実体験に結びつける研究がベースにある。2022年1月より、食感デザインをオノマトペから探る「3D構造体おでんの会のための実験会」を開始。23年1月には、3Dフードプリンターで作った食感構造のコンセプトモデルを味わう「3D構造体食感ビュッフェ」を開き、オノマトペだけでなく、参加者が感じた食感の文脈的表現を集めた。そうした活動をもとに、プロンプトから食感を解釈し生成する食感ジェネレーターを開発。オンライン上での処理を可能にし、世界中の人が食感を探求できる環境構築を進めている。プロジェクトには当初より、3Dフードプリント技術を軸に食製造・食体験の拡張を目指すスタートアップ企業のByte Bitesが参画している。
相性のいい産業分野
- 製造業・メーカー
好みの食感を食製品に反映できるパーソナライズサービスの開発
- 食品・飲料
食感をメニューで自由に選べるレストランの展開
- 旅行・観光
食べたことのない世界中の食べ物の食感を味わえるバーチャル世界旅行の開催
- アート・エンターテインメント
バーチャル空間の架空の食べ物を味わえるフードイベントに活用
- 教育・人材
調理で目指す食感や未知の食材の食感を学ぶ教材として活用
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 高次素材設計技術研究舎-Melt.-