No.626

2023.10.04

デジタルテクノロジーソリューション

FichvitaⓇ(フィッチヴィータ)

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概要

「Fichvita®」とは、東洋インキグループのセンシングやデータによるデジタルテクノロジーソリューションの総称である。独自開発のセンシングデバイスやそれにより取得したデータの加工・可視化・分析といった活用、さらにはAIによるソリューションの提供など、モノづくりに留まらない新たな価値を社会へ提案する。FichvitaⓇのセンサーは、設置環境の明るさや、カメラや光などで生じがちな死角の影響を受けずに、人の行動を検知できる非光学式行動検知システム。床や座面などに設置したセンサーが、人の位置や大きさ、向き、移動などを検知する。人とロボットを区別して両者同時の検知も可能で、モノの検知もできる。独自の素材技術と回路設計技術を用いて、カメラなどが不要なシステムを構築し、匿名性を保ったまま行動の検知・データ化を実現している。人の行動把握やセキュリティ対策だけでなく、医療領域やAR/VRコンテンツとの連携、ロボットが共存する空間構築など、幅広い領域での活用が期待されている。

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なにがすごいのか?

  • 死角なく行動を検知できるセンシングシステム

  • 個人情報に触れることなく、匿名性を保ちながら人の動きを検知

  • 床や椅子などに実装する仕様の見られている感のないシステム

  • 人だけでなくロボットやモノの検知も可能

なぜ生まれたのか?

近年、施設や街など生活の中で監視カメラや様々なセンサーが設置され、人流や人の行動・挙動などのデータ活用が進んでいる。人の行動に基づくサービス提供は、ニーズへのマッチ度や利便性を高める一方で、個人情報・プライバシー保護の観点からリスクもはらんでいる。そうした背景から、東洋インキグループは「生活環境に溶け込んだ」センシングシステムの開発を開始。グループのコア素材の1つであるボリマー(樹脂)や、エレクトロニクス分野などの機能性製品を手がけてきたトーヨーケムの技術力と、グループの研究開発で構築した回路設計技術を組み合わせてシステムを開発。「被視感」無く、匿名性を保てる、非光学式行動検知システムを実現させた。

実現事例 実現プロジェクト

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ここちあ利楽(りらく)flow

「ここちあ利楽flow」は、介護用ベッドなどを手がけるパラマウントベッドが提供している、床ずれ防止エアマットレス。体重設定から、体形に合わせた硬さ設定、姿勢の検知、体位変換、姿勢保持サポートなどを全自動で行う。「Fichvita」は「ここちあ利楽flow」に実装され、2020年より販売を開始している。マットレスの下層ウレタンを挟みこむように、薄膜の「Fichvita」を設置。患者の寝位置が移動してマットレスが変形すると、「Fichvita」が間の距離変化を検知し、体位変換を自動で行うスモールフローを制御してベッドからの転落を防ぐ。また、体を起こす際はその動きを検知し、マットレス全体の内圧を上げて硬くして、端に座った際の姿勢を安定化させる。「ここちあ利楽flow」には、大面積のセンサーシートを搭載しており、精緻な位置検知が可能なことから、マットレス全体の制御に活用されている。

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なぜできるのか?

圧力を検出する独自開発のセンシングシステム

床などに設置し圧力の検出が可能なセンサーパネルを独自開発している。ユーザーニーズに合わせたシステム構築ができるよう、複数のセンサーパネルを接続して構築する仕様を採用。圧力を検知するパネルと、複数パネルの制御を行う制御装置、圧力検出に応じて所定の処理を行う処理装置を備えたシステムを開発し、柔軟性の高いセンシングシステムを実現している。

素材製造で培った分散・樹脂合成・コンバーティング技術

ポリマーを軸に素材製造で培ってきた、粒子を成分中に均一または構造形成しながら混ぜて安定化させる分散技術や、樹脂合成の技術、薄膜や積層状にシート化・ロール化するコンバーティング技術を活用。シート型・床型・パネル型と、形状の異なる3種類のセンサーデバイスを開発した。

変形を可能にする独自の貼り合わせ加工技術

薄膜状のシート型センサーは、独自の貼り合わせ(ラミネート)加工技術を活用している。電極部分は折り曲げ可能で、形を変えられる。着座検知や、マットレスなどでの位置・形状・姿勢の検知、物体との距離の把握などを可能にしている。

独自パネルによる移動や方向検知

パネル型センサーは、40cmx50cmのパネルをつなぎあわせて床に設置し、人数カウントや、人の移動・速度、足の踏み込み、旋回、姿勢の変化などを検知する。方向は、パネル上に細かいグリッドを配置し、それを利用して足の踏み込み方に基づいて検知している。

相性のいい産業分野

メディア・コミュニケーション

匿名性の高い人流・行動検知データをマーケティング・プロモーションに活用

流通・モビリティ

自動運転走行の着席状況を検知し運行を制御するシステム

住宅・不動産・建築

人とロボットが相互に行きかう空間・環境の構築

IT・通信

カメラと組み合わせて施設への不審者の出入りを防止するセキュリティシステムの開発

医療・福祉

病院や介護施設で患者や利用者の状況を把握・行動をサポートするシステム

アート・エンターテインメント

動物の行動・ルートを把握して最適な動物園の展示を提供

スポーツ

総合格闘技やレスリングなどの試合で競技の分析や判定を行うシステム

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © トーヨーケム 株式会社