No.910

Tech Direction Awards受賞作品

2024.09.06

壁紙のテクスチャを高精細に識別するAI画像識別アプリ

かべぴた

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概要

「かべぴた」とは、模様・凸凹・質感などのテクスチャを高精細に識別する壁紙AI識別アプリ。微細な差異を判別できる独自開発の画像識別AIモデルを搭載しており、撮影した局所的な壁紙のテクスチャを認識して、品番・メーカーなどを識別する。国内主要メーカー6社の普及品壁紙(量産クロス)情報がベースで、90%以上の識別確率で、撮影画像から壁紙品番を表示できる。リフォーム時などに生じる壁紙の特定は従来、紙ベース・手作業による微細な違いの判別で多くの時間と労力をかけていたが、識別アプリにより数秒での識別を実現した。識別技術は、布・皮・石材といった様々な素材に応用可能で、インテリア・建築領域に加え、農業や医療など多領域への展開が期待されている。

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かべぴた_sub2 2024年1月時点の収録数

なぜできるのか?

産学連携によるプロダクト開発

インテリア・内装事業などを手がけるコマツと、信号処理・機械学習を専門とする同志社大学 理工学部 インテリジェント情報工学科 知的機構研究室が連携して、プロダクトを開発した。従来、「この壁紙が好きで新しい内装にも同じものを使いたい」という顧客リクエストに対しては、複数社の紙のサンプル帳を持参し、壁紙と照らし合わせて特定する手法が一般的だった。一方で、普及品壁紙はテクスチャが微細に異なる類似品が多く、熟練の職人でも判別に時間と労力がかかるため、コマツは運用上の課題感を持っていた。コロナ禍が後押しとなり、壁紙特定にAIの画像認識技術を活用できないか検討を始めた。協業先探しは難航し、複数アプローチの後、同志社大学のリエゾンオフィス(産官学をつなぐ窓口)を訪問。共同開発に至り、2021年9月より開発に着手し、23年12月「かべぴた」を発表した。

「自動テクスチャ識別プログラム」の開発

微細なテクスチャを識別できるAIモデル「自動テクスチャ識別プログラム」を共同開発し、「かべぴた」の基幹システムに用いている。従来の撮影型判別ソフトの多くは、色・形・背景など写りこんだ様々な要素から対象物を判別しているが、独自AIモデルは、局所的なテクスチャの画像で壁紙の特徴・差異を識別できる。壁紙は凸凹や模様が多いため、画像撮影時に照明の明るさ・角度・影などの影響を受け、識別モデルの開発には困難が伴った。開発メンバーは、ニューラルネットワークの癖を読み解き、テクスチャデータ調整・データ化やディープラーニングを行って、高精細な壁紙識別モデルを実現した。

現場運用を想定した設計

現場で簡単に使える設計で、スマートフォンアプリで壁紙を撮影すると、確率の高い上位5つの品番・メーカー・掲載カタログの情報を数秒で表示する。識別確率が高く、正しい判定結果を最上位に表示する確率は約90%。上位5つ以内に表示する確率は95%に達する。アプリは、国内主要メーカー6社(サンゲツ、シンコール、東リ、トキワ、リリカラ、ルノン)の普及品データをベースに構築。廃番品や6社以外のデータ化されていない壁紙でも、データベースから近しい壁紙データを表示するため、インテリアデザイン・コーディネートのサポートツールとして活用できる。

相性のいい産業分野

住宅・不動産・建築

自宅内外の気に入った壁紙を内装に採用できる仕組みの構築

IT・通信

家中の壁紙をデジタルデータ化し、劣化・消耗を検知して交換するサービスの開発

製造業・メーカー

製造ラインでプロダクトの検品・不良品検知に活用

農業・林業・水産業

植物や生物の状況を判別して栽培・収穫をサポートするツールの開発

環境・エネルギー

壁紙データに使用成分や環境影響などを紐づけ、建築の環境貢献度を可視化

この知財の情報・出典