No.1017
2025.02.26
植物繊維(セルロース)を最大85%含む高強度プラスチック代替素材
kinari(キナリ)
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概要
kinariは、植物繊維(セルロース)を最大85%含む植物ベースの高機能素材。従来の石油由来樹脂と同等の強度や機能性を維持しながら、石油使用を55〜70%以上カットすることで環境負荷を低減することに成功した。間伐材や廃紙、コーヒーかすなど、さまざまな植物廃材を原料として生産するため、バイオプラスチックで懸念される食料資源との競合による価格高騰の心配がない。将来的には、使用後に水と二酸化炭素へ分解できる生分解性の向上と、つなぎ樹脂も植物由来にすることで、100%サステナブルな素材の開発を目指している。
なぜできるのか?
セルロースを高濃度で混錬する技術
パナソニックグループが永年培ってきた電池用材料の混錬技術を応用し、植物繊維(セルロース)を最大85%まで配合する高濃度混錬を実現。セルロースを含有することによって、従来の石油由来樹脂と比べて軽量かつ強度の高い素材となった。また通常のプラスチック成形機での加工を可能にしたことで、既存の生産設備を活用することができる。
石油由来樹脂に劣らない機能性と加工の自由度
高弾性率、高耐衝撃性を備え、他の複合樹脂と比較しても機能面で優れている。さらに、射出成形プロセスの温度・流動制御により、成形品の色みや色ムラを自在にコントロールできるため、好みの色や質感を表現できる。
生分解とリサイクルの二つの素材循環モデル
素材の生産・廃棄・分別・再生資源化にいたるまでの仕組みを、生分解とリサイクルの二つの面から循環モデルを構築。全ての構成要素が自然界で安全に分解されることを目指し、100%生分解可能な技術の確立に取り組んでいる。マテリアルリサイクルにおいては、kinariは植物繊維が折れにくいために物性劣化が著しく低く、新たにバージン材を添加する必要がない。サーマルリサイクルの面でも、セルロースを燃焼しても元の植物に含まれていた炭素を放出するだけなので、カーボンニュートラルを実現できる上に燃焼後に埋め立ての処理もいらない。
植物性廃材を原料に活用
間伐材、廃紙、コーヒーかす、農業残茎など、これまで廃棄されてきたさまざまな植物性廃材を原料として活用できる。これにより、CO2排出量の削減に大幅に貢献。またバイオプラスチックの多くは、食料需要と競合するため、価格高騰を引き起こす懸念があるが、kinariは廃材を活用するためその心配がない。さらに、元の植物が持つ色や香り、カテキンなどの抗菌性といった特性を活かせるため、多様な製品展開が可能になる。
相性のいい産業分野
- 製造業・メーカー
植物の色味や風合いを活かす自在な加工技術で、ボタニカルなインテリアと調和した冷蔵庫や洗濯機などの家電の筐体を制作
- 資源・マテリアル
地域の特産物の農業廃材を地域で集め、そのまま原料として活用する地域内完結型サプライチェーンを構築
- 食品・飲料
生分解やリサイクルに優れた素材として、フードデリバリーやテイクアウトの容器のプラスチックゴミ問題に貢献
- 医療・福祉
使い捨てが多い医療現場で活用し、患者にも地球にも優しいサステナブルな医療体制に貢献
- 生活・文化
衣類のボタンやバックル、カバンの持ち手などに活用し、木材やコーヒーの香りを残すことで嗅覚を刺激するファッションの制作
- 教育・人材
学校の廃紙をシャープペンやボールペンへ再利用することでリサイクルについて教育
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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