No.1064

Tech Direction Awards受賞作品

2025.08.20

一筆書きの線の揺らぎごと指輪にする、銀粘土の3Dプリントリング

清澄製銀

img12

概要

清澄製銀とは、3Dプリンティング技術と焼成することで純銀になる「銀粘土」という素材を組み合わせ、誰もが創造的にシルバーアクセサリーを制作できることを目指したプロジェクト。従来の金属加工で使われてきた鍛造や鋳造といった技法は、専門的な知識や高度な設計ソフトを必要とし、表現の自由度にも限りがあった。このプロジェクトでは、銀粘土を微量で出力できる独自開発の3Dプリンタと、iPadで描いた線をその場で3Dデータに変換するシステムを組み合わせ、直感的で自由な指輪制作を可能にしている。さらに、彫金職人との協働を通じて、職人の視点とテクノロジーを掛け合わせることで、新しいものづくりの可能性についても探究。この仕組みによって生まれた指輪のデザインはすぐに出力でき、自らの手で磨き上げることで、純銀の指輪として完成させることができる。

img3

img8

gcode img

なぜできるのか?

開発負荷を最小限に抑えた銀粘土対応の3Dプリンター

ハードウェア開発では、ゼロから設計するのではなく、改造事例が豊富でハード構成が公開されているCreality製の3Dプリンターをベースに採用。既存の筐体やリニア機構といった信頼性の高い部品を活かしながら、銀粘土という高粘度素材に対応するための独自押出ヘッドと電子制御を設計した。これにより、開発負荷を最小限に抑えつつ、素材特性に最適化されたプリンターを構築している。さらに、指輪職人と協働し、付け心地やサイズ感といった実用面を担保するとともに、粘土ならではのマットな質感を活かした仕上げから燻銀加工まで、多彩な仕上げのオプションを実現。

銀粘土に対応するヘッドとシステム設計

微量の銀粘土でも確実に出力できる専用モジュールを設計・開発。このヘッドは、少量でも詰まりや分離を防いだ押出を実現する。さらにステッピングモーターを組み合わせた出力機構を搭載し、出力速度と圧力をリアルタイムに可変制御するシステムを構築。厚層・薄層の切り替えや曲線部での微速出力などが可能となっている。

iPadの線画をワンタップで3Dモデルに変換

従来のオーダーメイド指輪はスケッチやワックス原型でしか確認できず、完成後にイメージと異なるという課題があった。この技術では、人間が一筆書きで書いた1本の縁をアルゴリズムで3Dモデルに変換する。iPadで描いた手描きの線をベクターデータとして取り込み、指輪のベース形状へと変換するSVGベースのワークフローを構築。PythonとBlender APIを用いた独自のWebシステムにより、ユーザーが直感的に操作し、自分だけのジュエリーをデザインできる仕組みを実現。これにより、iPadの線画をワンタップで3Dモデルに即時変換し、リアルタイムに全方位プレビューが可能。3Dモデルとして保存されるので、何度でも試作を行うことができる。

相性のいい産業分野

資源・マテリアル

3Dプリントによる効率的な資源作成の提供

食品・飲料

3Dフードプリンターへの活用

アート・エンターテインメント

描いた絵を3Dプリントするサービスなど新たなアート体験への活用

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

Top Image : © 株式会社 dot-hzm