No.1008
2025.09.18
土から生まれ、スマート技術で管理する次世代3Dプリンター住宅
Lib Earth House(リブ アース ハウス)

概要
「Lib Earth House」とは、国内初の、土を主原料にした3Dプリンター住宅。セメントを一切使わず、廃棄物にならない再生可能な自然素材のみで壁を形成し、人の手では再現困難な曲線や有機的な形状を自在に描き出す。3Dプリンターによる積層技術と木造建築を融合させ、日本の建築基準法に適合しながら耐震性も確保。IoT技術で住宅の状態を常時モニタリングし、太陽光と蓄電池でエネルギーを自給する、持続可能な次世代住宅として期待されている。
なぜ生まれたのか?
住宅業界は50年以上にわたり、工法・素材・構造において本質的な革新が見られず、従来型の枠組みに留まり続けてきた。対して、自動車業界はEV化や自動運転で急速に進化しており、住宅分野にも構造的変革がこれまで以上に求められていた。さらに、世界的な住宅不足や建設労働者の慢性的な不足、脱炭素社会の実現という社会課題も深刻化。こうした業界構造と社会課題の両面から、持続可能で再現性の高い「住まいの選択肢」を増やすことを企業使命と捉え、3Dプリンター技術と自然素材の融合による革新的な住宅開発が行われた。
なぜできるのか?
土を主原料にしたサステナブルな建築材料
土を約65%含む独自の材料設計により、建築に必要な強度と施工性を両立させた。産業廃棄物となるセメントを完全に排除し、土・石灰・自然繊維のみで構成される配合技術を確立。従来のセメントを一部使用していたモデルと比較して、強度を約5倍に向上させた。また、製造時のCO2排出量は従来のRC造※と比べて約50%削減し、木造住宅よりも少ない排出量での施工を実現した。この材料技術は特許出願中であり、サステナブル建築の新たな基準になり得る。
※RC造:鉄筋コンクリート造の略称。
木造と3Dプリンター技術による強固な構造設計
骨組みには従来の木造を採用し、3Dプリンターで作る土壁は構造的に独立した自立型の外装材として設計。木造の骨組みと3Dプリント壁の両方が、耐震等級3相当※の強度を持ち、それぞれが地震に耐える二重の安全構造を実現した。プリンターが設計データに従って材料を層状に積み上げることで、斜め格子や複雑な曲線といった、職人の手作業では難しい造形も正確に作り出せる。国土交通省をはじめとした行政機関との協議を経て、建築確認済証を取得し、建築基準法に適合した正式な建築物として認可されている。
※耐震等級3:建築基準法の1.5倍の地震力に耐える最高等級。震度6強~7の地震でも軽い補修で済む強度。
スマート技術による次世代住宅システム
壁内部に最新センサーを埋設し、温湿度をリアルタイムで監視する「壁内結露監視システム」を導入。住宅が自らの状態を把握し、結露やメンテナンスの必要性を事前に察知することで長寿命化を実現する。顔認証システムを備えたスマート玄関ドアや、エアコン・照明・風呂の遠隔操作が可能なIoT設備を標準装備。さらに、テスラ社製蓄電池「Powerwall」と太陽光発電パネルを組み合わせたオフグリッドシステムにより、外部電力会社に依存しない完全自給型のエネルギーシステムを構築した。
相性のいい産業分野
- 住宅・不動産・建築
注文住宅として個別設計ができる上に、従来の工法では実現できない自由な造形の建築が可能に
- 環境・エネルギー
再生可能な材料とオフグリッドシステムにより、カーボンニュートラルな建築ソリューションを提供
- 旅行・観光
グランピング施設や高級ヴィラなど、地域の土を使った独自性の高い宿泊施設の建設に活用
- 官公庁・自治体
災害時の仮設住宅や公共施設において、迅速かつ環境負荷の少ない建設手法として導入
- 航空・宇宙
月面や火星といった極限環境での住宅建設において、人手を必要とせず建築する技術として展開
- 生活・文化
地域の土や素材を活用することで、ローカルアイデンティティを反映し、文化的価値を持つ生活空間を創造
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 株式会社 Lib Work