No.1193

従来の印刷方式で不可能だった「自然な夜景」を再現できる技術

夜景を見たままの印象で普通紙に印刷できる技術

夜景を見たままの印象で普通紙に印刷できる技術

概要

「夜景を見たままの印象で普通紙に印刷できる技術」とは、従来の印刷方式では不可能だった「自然な夜景」を再現できる技術で、国際高等専門学校の大塚 作一教授の研究グループらによって開発された。2025年12月3日から5日まで広島国際会議場 (広島県広島市)で開催された「IDW2025(The 32nd International Display Workshops)」 において、Best Paper Award を受賞している。

なぜできるのか?

HDR撮影技術と、人間の概日リズム基づく独自の視覚モデルを応用し、MDR画像という新たな画像形式を提案

夜間、夕方の光環境は、現実世界では 10⁵:1 以上の超ダイナミックレンジを持ち、人間は「薄明視」と呼ばれる視覚特性でこの全ての領域を知覚することが出来る。しかし通常のディスプレイ表示画像(SDR:Standard Dynamic Range)は 約200:1以下 のコントラストしか扱えず、夜景の表示では明るい光源が白飛びしたり、暗部が黒く潰れる、階調が失われる、実際の肉眼での印象とは大きく異なる、印刷時の画質の大幅な低下といった問題が生じていた。国際高等専門学校の大塚 作一教授の研究グループらは、HDR(High-Dynamic-Range)撮影技術と、人間の概日リズム(サーカディアンリズム)に基づく独自の視覚モデル「Normalized Visual Percept(NVP)」を応用し、MDR(Moderate-Dynamic-Range)画像という新たな画像形式を提案。「夜景を見たままの印象で普通紙に印刷できる世界初の技術」を実現した。

従来の印刷方式では不可能だった「自然な夜景」を再現できる

HDR→hSDR(hyper-realistic SDR)→hMDR(hyper-realistic MDR)という人間の視覚モデルに基づく2段階の画像変換方式を開発した。特に、日内の視覚変化(朝/昼/夕/夜)を反映する独自のGTM(Global-Tone-Mapping)カーブを導入し、夜景の自然な再現に成功。また、極端にダイナミックレンジを圧縮しても、人間の知覚に重要な光源まわりの明暗構造や色トーンを保持でき、極端に低いレンジ「約30:1」の低コントラストでも自然に見える画像の生成が可能となった。これは、発表者の知る限り世界初の成果だとしている。高価な光沢紙を使用せず、普通紙(マット紙)での高品質印刷が可能で、一般的なマット紙を使用した場合でも、従来SDR印刷より知覚的自然さが大幅に向上することが、実験で示された。

人間の視覚特性を巧みに利用して印刷物でも「光って見える」という新現象を再現し、IDW2025で最優秀論文賞

「印刷物は反射光、光源の質感は出ない」という従来の常識を覆し、人間の視覚特性を巧みに利用することで、印刷物でも「光って見える」という新現象を再現した。これらの要素が総合的に評価され、IDW2025で最優秀論文賞(Best Paper Award)を受賞した。また、同研究グループは、2024年7月に、朝の見え方が生活パターンの影響で大きく異なることを発見。これは、人間の「朝型/夜型」といった 個人差ある明るさ知覚を考慮するという研究手法自体が独創的で、画像処理分野に新たな理論的枠組みを提示した。今回は、昼間とは格段に明暗の知覚範囲が広がる夜間の人間の視覚特性「薄明視」の実態を始めてGTMカーブにより具体的に明らかにした。

美術や防災、交通分野などでの応用に期待

夜景写真・天体写真の高品質印刷や電子ペーパー等の反射型ディスプレイへの応用、美術・文化財アーカイブ分野での“現場の光”の再現、防災・交通分野での夜間視認環境のシミュレーションでの応用が期待される。また、大塚教授は今後、室内HDR環境の再現技術への応用を計画している。

相性のいい産業分野

旅行・観光

観光地のパンフレットや旅先の写真撮影に活用

生活・文化

夜間の防犯対策への活用

航空・宇宙

肉眼に近いよりリアルな宇宙空間の撮影や天体観測への活用

アート・エンターテインメント

夜景写真など夜に特化したイベントの開催

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。 詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。 Top Image : © 学校法人金沢工業大学 国際高等専門学校

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