No.955

2024.11.27

廃棄布を再生した、木や石のような質感を持つ新しい布素材

NUNOUS®

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概要

「NUNOUS®(ニューノス)」とは、廃棄予定の布を再生した、木や石のような質感を持つ新しい布素材。廃棄布と熱で柔らかくなる植物由来の樹脂フィルムを重ね、加圧して固めて、シートや立体の素材を成形している。創業140年以上の歴史を持つ染色加工会社が、繊維廃材を新たな利用につなげて廃棄を減らし、環境負荷を削減する方法として開発した。ファッションやインテリア領域、日用品、アート、建材など様々な分野での活用と、廃棄布の新しいリサイクル手法として国内外への展開が期待される。

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なにがすごいのか?

  • 廃棄布から木や石のような質感を持つ新しい素材に再生

  • 布と植物由来の樹脂を組み合わせた加工性に優れた素材

  • リサイクルしづらい販売規格外品の布も再生可能

なぜ生まれたのか?

老舗染色加工会社のセイショクが、日々発生する出荷規格外品を捨てずに活かす方法を模索する中で誕生した。毎日50㎞におよぶ布を染色する中で、1%~2%ほどはどうしても販売基準に満たない規格外品が発生する。丹精込めて染色した布を、わずかな傷・色ムラだけで廃棄するのは勿体ないと考え、色を活かしたリサイクル方法の開発に着手した。ベースには、問題視されている繊維業界の環境負荷を減らしたいという想いもあった。

再生方法の開発は、岡山県工業技術センターの協力を得て推進。2018年、布と色の質感を損なわずに新たな特性を持つ「NUNOUS」を開発した。製造方法は特許を取得している。

開発以降、各地で事業を展開し、2019年にはホテルの室内装飾品としてハイアットリージェンシー東京に導入。他ブランドのホテルや商業施設、オフィスへの展開、ファッション・インテリア用品への活用など、多方面での採用実績を持つ。今後は、防火性能を持たせた大型建材など、さらなる展開が期待されている。

なぜできるのか?

樹脂を用いた布積層技術

色調の異なる数百枚もの布と、サトウキビ由来の熱可塑性樹脂フィルムを交互に積層。加熱・加圧で樹脂を溶かして布中に浸透させ、冷却と加圧で固めて板状に成形。それを垂直・水平・斜め方向などに裁断して、木目のような石のような質感のある素材に再生している。一般的な布の積層に用いられている接着剤が不要で、乾燥時間や工数の削減にもつながる。また、積層する布の枚数や配色、切断方向などに幅を持たせており、質感・模様・風合いの異なるデザインや構成を可能にしている。

優れた加工性と布にはない特性の付加

様々な形状に加工でき、布やシート状、強度のある立体物まで幅広く対応している。光を通す薄さのシートや革のような布、壁を覆う建材など、多様な加工が可能。素材自体に表裏がないため、両面を表として使用できる。耐水性もあるため、メンテナンスも容易。また、従来の布とは異なり端がほつれないため、布端の処理が不要で、フリーカットで製品に使用できる。抜き型裁断にも対応している。

相性のいい産業分野

資源・マテリアル

廃棄予定の布や布製品の製造過程で生じる端材を捨てずに再利用

製造業・メーカー

ファッション・インテリア、文具・小物類、家具、建材などの製品材料に活用

住宅・不動産・建築

住空間を形づくる扉や壁、床材などの建材として活用

旅行・観光

着物や織物など地域特性のある布製品を用いた、新たな工芸品や土産物の企画

ロボティクス

デザインを形にする積層・加熱・加圧ロボットの開発

この知財の情報・出典

・特許第6845551号
・特開2022-109417

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Top Image : © セイショク 株式会社