No.832

2024.03.06

振動で骨を強化し骨密度を改善するウェアラブルデバイス

Osteoboost

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概要

「Osteoboost(オステオブースト)」とは、振動で骨を強化し骨密度を改善するウェアラブルベルトデバイス。腰に巻くベルトデバイスで、腰や背骨などに穏やかな機械的刺激を与え、骨の成長を促して骨密度の低下を防ぐ。特に閉経後の女性に多い骨粗しょう症の発症リスクを減らすため、薬を使わずに日常生活の中で手軽に予防・治療ができるデバイスとして開発した。所要時間は1日1回 30分程度と手軽に利用できる。骨粗しょう症に伴う活動制限や骨折リスクを減らしてQOLを高め、アクティブシニアが活躍する社会の実現を促すと期待される。

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Osteo_sub2 Chan et al.、2013。骨粗鬆症の予防と治療のための非薬物療法としての振動の潜在的な利点と固有のリスク。Curr Osteoporos Rep 11: p. 36-44。

なにがすごいのか?

  • 機械振動で骨粗しょう症を予防・治療

  • 1日1回 30分ほどの利用を週5日以上続けるだけの手軽な仕様

  • NASAの振動療法の研究にもとづき日常で使えるデバイスを開発

なぜ生まれたのか?

NASAで始まった、振動で骨に刺激を与える研究をベースにしている。宇宙飛行士の無重力空間での骨密度低下を抑える研究にもとづく。Bone Health Technologiesはその研究をベースに、日々の生活の中で使えるデバイスとして「Osteoboost」を開発した。開発に際しては、米国国立衛生研究所(NIH)から資金提供を受け、複数の臨床実験を実施。2024年1月には、米国食品医薬品局(FDA)より、骨密度の低下を抑える薬を使わない治療機器として認証を得ている。

公益財団法人骨粗鬆症財団によると、日本の骨粗しょう症推定患者数は2022年時点で1,590万人おり、高齢化に伴い、年々増加傾向にあるという。その内、女性は7割以上を占めており、骨粗しょう症に伴う股関節や背骨などの骨折リスクが課題となっている。「Osteoboost」は日本でも特許を取得しており、今後の市場展開が期待されている。

なぜできるのか?

骨を強化する運動メカニズムにもとづく振動療法

骨粗しょう症は、加齢に伴い骨の成長が遅くなって、骨形成能と骨に必要なカルシウムの吸収能が低下し、新しい骨の生成が減少に追いつかなくなることで起きる。特に閉経後の女性は顕著にその傾向が表れる。運動することで骨を刺激して強化できるため、本研究はその運動メカニズムを用いている。ベースにはNASAの研究がある。無重力空間に長期間滞在する宇宙飛行士は、荷重負荷が減少するため、骨密度が急激に低下する。NASAは15年以上にわたり研究を推進。正確な振幅と周波数の振動で骨密度の低下を抑える、振動療法を構築した。その技術をもとに、日常的に使えるデバイスとして「Osteoboost」を開発した。デバイスで、運動中の骨にかかる負荷を機械的な振動で再現し骨の成長を促す。

暮らしの中で使える手軽なデバイスの開発

骨折リスクの高い腰部周辺にフォーカスし、局所的に振動刺激を与えるデバイスを構築している。足裏から振動を与える従来技術では、振動力の約40%が足首と膝で減衰し、腰部まで届かなかった。そこで背骨や股関節などに直接刺激を伝える、腰に巻くベルトデバイスを開発。骨強化の効果が見られる0.6g以上の振動刺激の伝達を可能にしている。ベルトには、接触センサーやジャイロスコープなどの複数のセンサーと振動を担うモーター、制御部などを搭載した装置を設置。腰側の装置から一定周波数で振動刺激を与える。ベルト型のため、利用時は1カ所に留まる必要がなく、家事や犬の散歩をしながら利用できる。1日1回30分ほどの利用を週5日以上続けることで、効果が得られるという。デバイスには30分で自動停止する機能がついているため手軽に利用できる。

相性のいい産業分野

医療・福祉

服薬状況や場所を問わない骨粗しょう症治療の展開

製造業・メーカー

骨粗しょう症を未然に防ぐヘルスケアデバイスとして提供

生活・文化

骨折リスクを抑制する“ながら健康機器”として活用

航空・宇宙

宇宙旅行・宇宙生活を快適に過ごすヘルスケアデバイスや防護服の開発

スポーツ

アスリートの骨を強化するスポーツデバイスの開発

この知財の情報・出典

・US 10206802/11026824/11219542/11806262
・特許第7186691号

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Top Image : © Bone Health Technologies