No.818
2023.12.05
景観に調和し高い発電効率を持つ“発電するガラス”
ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池
概要
「ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池」とは、建築資材のガラスと一体化したペロブスカイト太陽電池。ガラス基板上に直接発電層を形成し、太陽電池化した建材で、ガラスを使える場所であればどこでも設置できる。有機ELディスプレイ生産時の技術を応用し、ペロブスカイトモジュールとして世界最高レベルの発電効率を実現している。従来のシリコン基板の太陽電池は透光性が低く、景観を損ねる懸念からガラス面への搭載は進んでいないが、それを解消し、建物や都市と調和する太陽電池として広範囲での活用が期待されている。
なにがすごいのか?
景観を損なわず、ガラス面であれば幅広く設置可能
ペロブスカイトモジュールで世界最高レベルの発電効率17.9%を達成
大面積でも均一な層材料の塗布が可能なインクジェット技術
なぜ生まれたのか?
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの1つとして太陽電池の普及が求められている。一方で、日本は平地が少なく、建物屋上の設置面積にも限りがある。そこで近年、建物の壁や窓などを利用する発電方法が注目され、実現方法として軽量化が可能なペロブスカイト太陽電池の開発が進んでいる。ただ従来技術では、実用サイズでのペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率(光を電気に換える割合)は低く、一般的なシリコン基板の太陽電池の発電効率とされる約20%にも遠く及ばなかった。また透光性にも課題があった。
パナソニックは、有機ELディスプレイ生産の技術を応用して、独自のインクジェット技術による塗布法を採用。実用サイズでの世界最高レベルの発電効率(17.9%)を達成した。そうした技術をもとに、ガラスの透明性を活かした「ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池」を開発した。
実現事例 実現プロジェクト
Fujisawa サスティナブル・スマートタウン内での長期実証実験
「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(以下、Fujisawa SST)内での長期実証実験」は、2023年8月より開始された「ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池」の実証実験(実施予定期間は2024年11月29日まで予定)。実験は、神奈川県藤沢市のFujisawa SST内に新設されたモデルハウス「Future Co-Creation FINECOURTⅢ」の2階バルコニーで行われた。幅3,876 mm x 高さ950 mmのバルコニーに、グラデーション状の透過型ペロブスカイト太陽電池のプロトタイプを配置。目隠し性と透光性を両立させたデザインや、長期間の設置による発電性能や耐久性などを検証した。実証実験の結果をもとに、事業化に向けた技術開発を加速させ、2028年頃の量産化を目指している。
なぜできるのか?
発電層を塗布する独自のインクジェット技術
大面積のガラス上に均一に層材料を塗布するため、有機ELディスプレイ生産で用いていたインクジェット塗布技術に着目して開発を開始。ペロブスカイト太陽電池モジュールの基盤に塗布するインクの作製・調製技術を含めた、インクジェットによる大面積塗布法を開発した。それにより、発電層をガラス基板に塗布してモジュールを形成。実用サイズ(804㎠)での世界最高レベルの発電効率(17.9%)を持つ、「ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池」を実現している。
軽量化や加工を可能にするガラス基板の活用
建材として活用しやすいようガラスを基板に用いて、軽量化技術を開発。保有するレーザー加工技術で、サイズなどの加工にも対応する。インクジェット塗布製法と組み合わせ、透過性やデザインを含めた自由な設計を可能にしている。
有機ELディスプレイの技術・開発者の転用
有機ELディスプレイは、有機化合物に電圧をかけて発光させる仕組みで、太陽光から電気をつくるペロブスカイト太陽電池とは逆の過程をたどる。一方で、使用する材料やデバイス構築のプロセスが類似していることから技術的な親和性があるとして、有機ELディスプレイの技術と開発者を活用。新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)から一部支援も受けながら開発を進めた。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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