No.819

2023.12.08

超音波で繊維の隅々まで染料を定着させる藍染技術

AIZOME ULTRA

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概要

「AIZOME ULTRA」とは、超音波で藍染の成分を布の繊維に強く定着させる染色技術。染液の中に超音波でマイクロバブルを生成し、繊維の空洞の隅々まで染料を押し込んで付着させる。洗濯により藍の成分が抜けて薬効や色が落ちるといった藍染の課題を解消するため、新たな染色方法として開発した。品質保持だけでなく、手作業の機械化、染料水の大幅削減なども図れるため、藍染の良さを活かしながら、現代社会と地球環境に応じた藍染文化へと変容を促すと期待される。

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なにがすごいのか?

  • 超音波を用いて藍染の染色を実現

  • 熟練藍染師が経験をもとに手作業で行っていた染色作業を機械化

  • 染色時の水使用量を従来技術より大幅削減

なぜ生まれたのか?

ドイツ出身のAIZOME共同創業者マイケル・メイ氏の母親が癌を患った際に、ベッドシーツの影響でひどい肌荒れを起こしたことがきっかけだった。医者から、原因はシーツに含まれる化学物質を使用した合成染料の可能性が高いと言われたため、無染色のシーツに変えたところ肌荒れは改善。その経験から、肌に優しいオーガニックの布製品を作ることを決めたという。

その後、日本の伝統技術である「藍染」を知り、消臭や保温、抗菌といった効果・効能がある点と、洗うことで藍の成分が抜ける弱点に興味を持ち、新たな染色技術の開発に着手した。藍染師の手ほどきや協力を得ながら、2016年に染色時に超音波を用いる独自技術を考案。技術開発を進め「AIZOME ULTRA」を確立した。同技術をもとに2019年、日本人の共同創業者とAIZOMEを設立している。

実現事例 実現プロジェクト

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AIZOME WASTECARE

「AIZOME WASTECARE」は、「AIZOME ULTRA」による藍染工程から出る廃水を使用したスキンケア製品。欧州の研究機関ユーロフィンの調査で、染色後に出る廃水に藍の有効成分が含まれ保湿効果があるとわかり、その特徴を活かして開発した。化学物質を一切使わない製造工程から出る廃水で、肌を整えて保湿する、藍の効能を活かした美容液を実現した。美容液は、化粧品としての安全性にも配慮して医療用の小瓶に詰め、梱包にはリサイクル材を用いている。

なお「AIZOME WASTECARE」は、2023年6月にフランスで開催された世界的なクリエイティブの祭典「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」のデザイン部門で、ゴールドを受賞している。

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なぜできるのか?

52.5kHzの超音波を用いた微細気泡による染色

染液に52.5kHzの超音波をかけ、直径0.1mm以下の微細な気泡・マイクロバブルを生成。生成した無数のマイクロバブルで染液を攪拌して藍の成分を均一に分散させ、繊維の空洞に染料を押し込んで染色する。染料を繊維に固定するバインダーなどの化学物質を使わず、独自の染色技術を構築している。また技術構築を進める中で、熟練藍染師の経験・知見で行っていた染色作業の機械化も行った。

オーガニックな藍染染色の活用

化学物質を使わず、植物と水で染めるオーガニックな藍染に着目。創業者らは、熟練の藍染師から手ほどきを受けながら、菌の繁殖を抑えて肌荒れを防ぐ効果や、保湿、紫外線防止などの薬効も学び、藍染を習得した。AIZOMEでは、抗炎症作用などがあるインディゴやルビア、敏感肌などを緩和するウルシなどの薬用植物を用いて染色をしている。

有害物質を廃棄しないプロセスの構築

合成化学物質や仕上げ剤を一切使わず、製造には全て生分解性の原料を使用している。また、染色に使う水の量を抑える設計をしており、通常よりも最大1/200まで削減。染色時に有害な廃水・廃棄物も出さない。また欧州の研究機関ユーロフィンの調査で、染色後に出る廃水に藍の有効成分が含まれており、保湿効果があるとの有益性も判明している。

相性のいい産業分野

製造業・メーカー

あらゆる繊維素材に染色成分を固定する超音波技術の開発

資源・マテリアル

化学物質を用いた染色をしているアパレル製造工程に導入

医療・福祉

病棟や介護施設などの寝具・ファブリックに活用

農業・林業・水産業

より自然由来で薬効の高い染色原料の栽培

食品・飲料

食べ物へ栄養素を染み込ませて機能性を強化

この知財の情報・出典

・WO2022260649

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © AIZOME