No.1087
2025.11.21
避難所でプライバシーを確保する紙管の間仕切りシステム
Paper Partition System(PPS)

概要
「Paper Partition System(PPS)」とは、避難所で長期生活を強いられる被災者・避難者のプライバシーを確保する、紙管を使った間仕切りシステム。紙の管を柱と梁に用い、目隠し用の布をかけるシンプルな間仕切りで、組み立てやすく、短期間で大量に避難所へ供給できる。2m×2mの基本ユニットは、連結してグリッド状に拡張でき、避難所の広さや人数に応じた拡張の対応が可能。梁にかけた布はカーテンのように開閉できるため、日中は開放して就寝時には閉めるといった柔軟な運用ができる。災害などで余儀なくされる避難所生活の環境を整えて、被災者・避難者の心身の健康をサポートし、生活再建を後押しすると期待されている。
なぜできるのか?
「紙の建築」技術と継続的な支援活動
1985年から再生紙を建築資材に取り入れ、パビリオンや住宅、美術館、シェルターなど多くの「紙の建築」を手がけてきた坂茂氏が開発した。
1994年のルワンダ内戦で難民の生活環境を知り、国連難民高等弁務官事務局(UNHCR)に紙のシェルターを提案したことをきっかけに支援活動に注力。国内では1995年に発生した阪神・淡路大震災から支援に携わった。同時期に、国内外の大規模災害発生時に住環境に関する支援を行う「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)」(NPO法人)を設立し、継続的に活動している。
活動の中で、仕切りのない場所での雑魚寝など、プライバシー確保が不十分な避難所生活の課題に着目し、2004年の新潟県中越地震から間仕切りシステムの開発を推進。被災地を巡り、システムを提供しながら利用者・管理者などの声を聞き、改良を重ねて、2006年に紙管と布を使ったシステムを構築した。2016年には「GOOD DESIGN AWARD」で金賞を受賞。2024年の能登半島地震の際にも、被災地支援プロジェクトの中で避難所に「PPS」を提供した。
多様な避難所に耐えうるシンプルで柔軟な設計
避難所へ早期に供給できる間仕切りシステムを目指し、短期間で大量生産が可能な紙管を部材に採用。紙管の柱に梁を挿し込んで組み立てでき、梁のジョイントをつないで無限に拡張できる、シンプルな構造の間仕切りシステムを開発した。
仕切りの高さが目の位置より上になるよう、空間を2mで囲む基本ユニットを設計して、プライバシーの確保を実現。布をかける場所は自由に変えられるため、基本ユニットとしての使用に加え、複数ユニットをまとめた広い空間の間仕切りにも対応する。間仕切りの布は、避難所の衛生管理のために開放したり、閉めて健康状態を確認したりと、現場に応じて運用可能。被災者・避難者は、周囲の視線を感じずにパーソナルな空間を持てるため、避難生活の精神的な負荷の軽減につながる。また解体も簡単で、再利用やリサイクルにも対応。避難所の撤収も容易になる。
相性のいい産業分野
- 官公庁・自治体
災害時の避難所用・間仕切りとして各地域に配備
- 医療・福祉
被災地や医療施設が整っていない地域の診療ブースに活用
- 生活・文化
会社内の共有スペースやシェアオフィスなどの間仕切りに利用
- 教育・人材
学校行事に用いて、背景や経緯を学びながら設営を体験
- アート・エンターテインメント
展示会やイベントのブースや休憩スペースなどに活用
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Shigeru Ban Architects, 坂茂建築設計

