No.1012

2025.01.29

イネから牛乳たんぱく質を生成する農業技術

植物分子農業 by Kinish

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概要

「植物分子農業 by Kinish」とは、イネから動物性の牛乳たんぱく質を生成する農業技術。動物由来の遺伝情報の導入と光合成により植物から有用物質をつくる植物分子農業の技術を活用し、独自開発したイネの内部で牛乳たんぱく質を生成する。温室効果ガス排出を助長する牛(畜産・酪農)の代替が模索される中で、植物性ミルクが登場するも濃厚感不足など味わいに物足りなさを感じるケースが少なくない。そこで、植物を用いて牛乳本来の美味しさを再現する技術を構築した。生成した牛乳たんぱく質で、アイスクリームやチーズなどの乳製品を開発しており、環境と人にやさしい持続可能なプロダクトとして、国内外での幅広い流通が期待されている。

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植物分子農業 Kinish

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なぜできるのか?

特殊なイネの開発と活用

医薬品の成分や素材開発などで用いられていた植物分子農業の技術を活用し、特殊なイネを独自開発した。植物分子農業は、植物のDNAに特定の微生物の遺伝情報を組み込み、光合成エネルギーなどを介して有用物質をつくる技術。植物が生成する物質は遺伝子組み換え作物にあたらない。Kinishは、独自のバイオテクノロジーで牛乳たんぱく質を生成する丈の低い(矮性)イネを開発。牛乳のたんぱく質の約8割を占める「カゼイン」をイネから生成しており、牛乳のコクやクリーミーさも再現できる。

大量生産できる植物工場の構築

開発したイネを大量生産できる植物工場を構築した。開発した高さ20㎝の矮性イネは、棚に段積みする形で栽培が可能。独自技術で通常のイネの半分の期間での収穫を可能にしており、年間6回、イネを栽培・収穫できる。また、イネから得られた牛乳たんぱく質でアイスクリームとチーズを商品開発。アイスクリームはコメのでんぷんでつくった甘味を掛け合わせて味わいを深めており、チーズはとろり感も再現できる。2024年10月に米サンフランシスコで行ったアイスクリームの試食会でも高評価を獲得。2025年中に国内外での販売を予定している。

相性のいい産業分野

製造業・メーカー

イネ由来の乳製品ブランドの企画開発

食品・飲料

ヴィーガン・乳糖不耐症・環境志向の消費者向け飲食店の展開

IT・通信

イネの栽培を完全制御・管理できるスマート農業の推進

航空・宇宙

宇宙食への活用や宇宙空間で栽培する作物に採用

資源・マテリアル

イネ由来たんぱく質による環境にやさしいプラスチック素材の開発

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 株式会社 Kinish