No.1013
2025.02.13
皮膚からの微弱な電気刺激で味を増強する調味技術
電気調味料
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概要
「電気調味料」とは、皮膚からの微弱な電気刺激で味覚をコントロールする調味技術。下顎の前部と首の後ろに微弱な電気を流して味覚を刺激し、食品の塩味や味の強さなどを増幅する。デバイス装着中は常に味覚を増強でき、食べ物を口に含むところから咀嚼中、飲み込む際まで調味が可能。新しい概念の調味料として、首や耳にかけて使うウェアラブルデバイスでの展開を目指している。塩分を控えた減塩食を摂る人の生活を豊かにするとともに、次世代の調味料を活用した食品や飲食サービスの開発を促すと期待される。
なぜできるのか?
「電気味覚」を用いた新たな技術の開発
電気刺激で味覚を変える「電気味覚」の技術がベースにある。「電気味覚」は、塩分の過剰摂取を抑える有効な手段として日本国内でも研究が進められており、カトラリーなど食器型デバイスがすでに登場している。食器型デバイスは、金属部が直接または食品を通して舌とつながっている間に味を増強する仕組みで、舌から離れると効果が得られない。そのため「電気調味料」は、皮膚を介して刺激を加える「経皮電気刺激」の方法を採用。デバイスを装着している間は、咀嚼中や嚥下時も含めて持続的に味を増強でき、固形系の食品にも活用できる。
開発を後押しする新規事業創出プロジェクト
味覚の基礎研究に携わっていた研究員が、新たな味覚の探求や「最期まで食の楽しさを失わない社会の実現」に取り組む中で、「電気味覚」に着目。味の素社内の新規事業創出プロジェクト「A-STARTERS」に応募・採択され、プロジェクトを開始した。
当初は食器型デバイスから研究を開始するも、常に調味できるデバイスを目指して方向転換。東京大学、お茶の水女子大学との共同研究で、経皮電気刺激による「電気調味料」を開発した。6種の減塩食品による塩味増強効果の検証では、全種類で塩味の増強を確認。食品によっては、うま味・酸味の増幅や、風味の変化も実証された。
デバイスのプロトタイプ開発
デバイスのプロトタイプ開発には、ロボティクスベンチャー企業のユカイ工学が参画。皮膚に貼り付けるタイプなど、複数バージョンの開発を経て、ヘッドホンのように首にかけて使うプロトタイプの開発に至った。開発にあたっては、社会に浸透しやすいデバイスを目指して、見た目や使いやすさも重視。開発したデバイスのコンセプトをもとに、首や耳にかけるウェアラブルデバイスの構築や、デバイスを用いた新たなサービス開発を目指している。
相性のいい産業分野
- 生活・文化
減塩食や薄味の料理を自分好みの味に調味
- 食品・飲料
「電気調味料」を使う前提の加工食品や飲食店メニューの開発
- 医療・福祉
生活習慣病などで減塩食が必要な人の食事に活用
- IT・通信
調味データを活用したレシピ開発や調理ロボットの開発
- アート・エンターテインメント
視覚・聴覚・触覚に味覚も加えた没入イベントや展示会の企画
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 味の素 株式会社