No.076

2020.05.25

あらゆる技術を前進させる、世界最強の磁石

ネオジム磁石

neozimu

概要

ネオジム磁石は、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする希土類磁石(レアアース磁石)の一つで、1980年代の発明以来、現在に至るまで世界最強であり続けている永久磁石。自然界に豊富な鉄を主原料とするため産業界において急速に普及し、ハードディスクや家電・自動車等の基幹部品として欠かせないものとなった。高効率で電力節約につながるエコロジーな側面も注目されており、今後はロボットや電気自動車をはじめさらに多様な分野への応用が見込まれている。

なにがすごいのか?

  • わずか1グラムで3キロの鉄を持ち上げる磁力

  • 自然界に豊富な鉄とネオジムが主原料なため量産が可能

  • スマートフォンから電気自動車まで幅広い利用範囲

  • 動力の高効率化につながり、環境問題にも貢献

なぜ生まれたのか?

もともとはコンピュータ回路に使われていた磁石の研究を行なっていた佐川眞人氏が、住友特殊金属(現・日立金属)にて、ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)系合金が磁石として有望であることを見出し、ネオジウム磁石を開発した。当時の「鉄では鉄原子同士の距離が近すぎるから磁石はできない」という説に対し、鉄原子の間にホウ素という小さな元素を入れて間隔を広げるというアイディアを具現化し、それまでの最強磁石であったサマリウム・コバルト磁石の磁力を超え、かつ廉価に量産できる新磁石の誕生に至った。

なぜできるのか?

資源的に豊富な鉄を中心とした合金組成

ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)系合金で強力な磁石を作るというこの知財は、その威力もさることながら、主成分が鉄という一般的な元素と希土類元素の中では資源的にも豊富なネオジムを用いたという点が画期的。原料資源に関する課題を払拭し、量産化・活用の多角化を促したため、今日の産業界に広く普及している。

応用分野の幅広さ

発明当初は小型ハードディスクドライブ等に、その後は自動車のモータや白物家電用モータ・コンプレッサ、携帯電話の基幹部品として多様な製品で使われている。また磁石試料が学術研究のために積極的に提供されたため、世界の研究者を巻き込んでネオジム磁石の基礎研究が進み、ネオジム磁石の材料科学の発展につながった。その結果ハードディスクヘッド駆動用アクチュエータに応用されるなどの発展的な成果を多くもたらしている。

環境保護につながる省エネルギー性

従来型のモーターから、ネオジム磁石を用いた高効率モーターへの置き換えが進めば、大きな電力節約が見込まれる。ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動および発電機、風力発電に使用されるなど、省エネルギー及び二酸化炭素排出量削減への貢献が期待されている。

相性のいい産業分野

環境・エネルギー

電力が安定供給できない地域でのパーソナル風力発電駆動装置

ロボティクス

常時稼働していても消費電力の少ない家庭用ロボット

住宅・不動産・建築

釘を使わない、強い磁力で組み立てる簡易住居

アート・エンターテインメント

鉄などの強磁性体をダイナミックに立体表現する、可変アート作品

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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