No. 130 遊びながら未知のタンパク質構造を解明する

Foldit(フォールディット)

Folditは、タンパク質の立体構造を解くパズルゲーム。ゲームプレイヤーは出題されたタンパク質の立体模型に対して折り畳み(fold)を行い、各プレイヤーが導いた三次元立体構造の解はスコアリングされ、オンラインでデータベースに蓄積されていく。研究者が解き明かせなかった立体構造が、ゲームをプレイした市民により短期間で明らかにされた実績もあるため、本知財におけるハイスコアを目指すことが、創薬や分子メカニズムの解明に繋がると期待されている。

なにがすごいのか?

  • ゲームプレイヤーのテクニックと直観が未知の構造を解明
  • 専門知識がなくてもゲームプレイだけで科学に貢献する可能性
  • 多言語やあらゆるOSへの対応による高い頒布性

なぜ生まれたのか?

従来、長く複雑な形状をしたタンパク質の立体構造をコンピュータで解析しようとする試みがなされてきた。しかし、立体構造を解析するにあたり普遍的に適用できるモデルは存在しないため、長期にわたり異なる立体構造の膨大な組合せをシミュレーションする必要があった。そこで、多様な人間集団の持つ経験と直観が最適解を導く事例が注目されてきた。本知財は、従来の手法では数え切れない立体構造の解析を、人間の試行に対して何らかの報酬がもたらされる仕組み(=ゲーミフィケーション)によって人間の直観を用いることのできるパズルにまで落とし込み、解決しようとする試みである。

2020年3月には、本作の開発者のひとりでワシントン大学のタンパク質設計研究所の研究者ブライアン・コエプニック博士が、新型コロナウイルスの抗ウイルス薬研究の一助になるよう「Foldit」のプレイをYouTubeで呼びかけている。

なぜできるのか?

カラフルで分かりやすいUI

水素結合・疎水結合などの分子間相互作用を分かりやすく色分けし、生化学・計算化学の専門知識のない人でも楽しみながら解析に参加できる。

教材としてのFoldit

ポリペプチドの主鎖・側鎖をカーソルで掴んで三次元的に動かすことで、タンパク質の折り畳みについて学習できる。タンパク質として本当にあり得る構造かどうかはゲームが判定し、存在すればスコアとして反映される。スコアはランキング形式となってWebサイトに反映され、解答は研究チームへとフィードバックされる。

相性のいい分野

バイオインフォマティクス
新型コロナウイルスのタンパク質立体構造をゲーミフィケーションで予測
医薬品開発
血液脳関門を通過する認知症治療薬を市民の集合知で解明
教育
小学校のICT系の授業に導入することで、プロゲーマーの素質をもつスーパー小学生が新たな立体構造を発見

知財情報

主な知財ホルダー:University of Washington Center for Game Science、University of Washington Institute for Protein Design、Northeastern University、Vanderbilt University、University of California, Davis、University of Massachusetts, Dartmouth

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

知財ハンター

Mitsuhiro Odaka
小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。