No. 157 “瞬間移動”を可能にする次世代の社会インフラ

avatarin(アバターイン)

avatarin(アバターイン)は、“物理的距離と身体的限界をゼロにする”をコンセプトに、アバターロボットに遠隔からログインすることで移動可能な視覚をともなう様々な活動を行うための技術。従来のバーチャル上で完結したり操作側のリテラシーが必要なアバターとは異なり、操作場所や肉体の能力に関係なく誰もがアクセスできる「社会インフラ」を目指す点が特徴的である。今後、様々なタイプのアバターロボットが誕生することにより、教育・医療・ビジネス・エンターテインメントなど生活に関わることすべてに応用可能であり、多くの実証実験が行われている。

なにがすごいのか?

  • 物理的な距離と身体上の制約を超える幅広い体験を提供
  • アバターを社会インフラとして捉え、幅広い活用を想定
  • 操作する側に特別なハードウェアや技術が不要

なぜ生まれたのか?

アメリカの財団主催のコンペでグランプリを得たアイディアが元となり、航空会社のANAが飛行機事業を超える移動概念を求めて事業化を進め、2020年にavatarin株式会社を創業。普及型アバターロボット「newme」などの開発と合わせ、アバターにアクセスする技術を開発。遠くにいる家族に会えたり、身体の不自由な人がスポーツを楽しんだりという体験が可能になる世界を目指す。2020年5月には宇宙アバター事業創出に向けて、国際宇宙ステーションにて「space avatar」の実証実験も開始された。

妄想プロジェクト

鍛えてなくてもバーチャル格闘家

拍手の渦に包まれて、頑強なロボットに憑依した挑戦者がまばゆいボクシングリング上に「アバターイン」した。企画応募者の中から選ばれたその挑戦者は10歳の少年。特に身体を鍛えてきたわけではないが、目の前にいる憧れのチャンピオンと対等に闘えることを何より嬉しく感じていた。

「Avatarin」があれば、このように別の場所にいる人間同士を、「今お互いが同じ場所にいる」という “存在感” を失わせることなく、うまく繋げられるかもしれない。アバターを操る人間は、実際にその場に物理的に存在するかのように動作を連動させられるため、生身の人間とインタラクションをとることができる。オンラインで画面越しの事務手続きを済ませることとはわけが違うのだ。プロボクサー選手と企業がパートナーシップを結んで、冒頭のような夢の特別企画を立ち上げることもできるだろう。

少年とチャンピオンは握手と抱擁を交わすと、お互いファイティングポーズをとった。闘いのゴングが今、高らかに鳴った。


妄想家: 澤邊元太 妄想画家: 佐藤柚花

実現プロジェクト

OriHime-D(オリヒメディー)

OriHime-D(オリヒメディー)は、日本財団・ANA AVATARの協力の元で開発された、テレワーカーでも遠隔操作で接客や運搬といった身体動作を行える分身ロボット。カメラ・マイク・スピーカーを搭載した全長約120cmの機体は前進後退・旋回の移動能力を持ち、上半身には14の関節用モーターを内蔵している。テレワーカーはインターネット経由で操作することで、ものを掴んで運んだり、自由に作成したモーションを再生したりすることができる。これにより、カフェでの接客やビル内での案内、作業現場での指示出しといった、身体を動かす必要のある業務が遠隔でできるようになる。また、難病と闘う子供の遠隔教育、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者のコミュニケーション・就労支援としての活用も期待されている。


space avatar

「space avatar(スペースアバター)」は、ANAHD・JAXA・avatarinによる共創型研究開発プログラム・宇宙イノベーションパートナーシップ “AVATAR X Programにおける共創の一環として、宇宙でのアバター利用を実証する実験である。
space avatarが搭載された「こうのとり」9号機(HTV9)は、2020年5月21日(木)午前2時31分、種子島宇宙センターから打上げられ、地上400km上空を周回する「きぼう」にアバターが設置された。11月には、一般人が「きぼう」内の「space avatar」をリアルタイムで遠隔操作し、「きぼう」船内から宇宙や地球を眺めるイベントが開催される。


相性のいい分野

フード
味覚を再現する知財(No147 味覚センサーレオ)と組み合わせ、遠く離れた名店の食事が楽しめるアバターレストラン
ウェルビーイング
遠くで暮らす高齢者の行動観察や居住環境の確認をする、実家見守り
建築
超小型化したアバターロボットを操作し、小動物や昆虫の目線から世界を見られる教材
宇宙
月食を見られるポイント上に置かれたアバターを乗り継いで、月食を心ゆくまで堪能する「月食リレー」
エンターテインメント
ドローン型のアバターに入り込むことで、自由な視点で楽しむ空中散歩
エンターテインメント
体内へ遊びに行く「ミクロの決死圏 with Avatarin」
共生
動物目線で一緒に群れたり動物の生活を見たりでき、あたかも動物になった気分にさえなれる「リアル・サファリパーク」
教育
病床に臥せる子供がアバターロボットを介して出席でき、学習遅れにも苦しまないような学校
観光
通常の観光では訪れることができない、海底や火山口、雪原といった極限地域へのアバタートリップ
医療
遠隔でも最高技術を持つ専門家をアサインできる「遠隔専門家」

知財情報

主な知財ホルダー:avatarin株式会社

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

丑田 美奈子 Minako Ushida
Writer / Konel Inc.

1982年神奈川県相模原市生まれ。ライター・プロデューサー・バックオフィサーの顔を持ち、活字と音楽をこよなく愛する。別名・最もテクノロジーから遠い超文系知財ハンター。彼女の琴線に触れる知財とはすなわち万人に届きやすい知財であることを意味する。未来を作る教育関連の知財や食関連など、実用性が高く生活に密着する知財を日々探している。