No. 195 宇宙で最も薄く、最も強靭、最も導電性に優れる材料

グラフェン

(c)2010 AlexanderAlUS

グラフェンは、炭素原子が蜂の巣のような六角形状で規則正しく結びついている単原子シート。グラフェンが3次元的に積層した結晶であるグラファイト(黒鉛)は、鉛筆の芯にも使われる身近な物質である。これまでグラフェンは生成が難しく理論研究のみにとどまっていたが、粘着テープでグラファイトからグラフェンを剥がす、という方法で生成に成功した。軽くて薄く、ダイヤモンドよりも強固な引っ張り強度と高い導電性を持っている。目には見えない原子レベルで波状に動く特徴を持ち、その運動エネルギーを電力に変換することで環境に優しいエネルギーを大量に生み出す可能性を秘めている。

なぜできるのか?

理論上でしか存在しなかった物質を生成した驚きの製法

グラフェンは60年以上前から研究されてきたが、安定した生成方法がなく理論上でのみ存在する物質であった。マンチェスター大学のアンドレ・ガイム教授、コンスタンチン・ノボセロフ教授は、粘着テープとグラファイト(黒鉛)である鉛筆の芯で遊んでいたところ、偶然グラファイトからグラフェンを引き剥がすことに成功。その製法を確立し、グラフェンの物性を研究して2010年にノーベル物理学賞を受賞した。

規格外の特性

グラフェンは薄い、軽い、強い、しなやか、透明という5つの特徴を持つ。具体的には、原子1層分の厚さで、どんなシートよりも薄く軽い。面内の共有結合が非常に強く、強靱でしなやか(面内の引っ張り強度はダイヤモンドより高い)。可視光に対して透過率98%とほぼ透明。

優れた伝導性

不純物や欠陥が入りにくい高い結晶性をもち、荷電粒子の移動速度はシリコンよりも高い。室温での熱伝導率と電気伝導率は、銅と同等かそれ以上で、分子1個の吸着過程すら電気伝導度の変化として読み取ることができる。

エネルギーを生むブラウン運動

自然界には存在しないグラフェンが成り立っているのは、炭素原子が不規則な振動を伴うブラウン運動を常に行っているからである。この動きから電流を発生させることで、環境に優しいエネルギーを大量に生み出す可能性を秘めている。

相性のいい分野

環境
極小の網状で分子を絡め取って二酸化窒素を検知するセンサーや、海水から塩分を分離して飲料水にするフィルター
デバイス
強固で、優れた透過率と導電性を活かした絶対に割れないスマホ画面
ファッション
運動エネルギーを電力に変換してデバイスに給電することができる衣服やアクセサリー
宇宙
軽さと強固さを兼ね備えたロケットや宇宙エレベーター
ハードウェア
低電力消費の超高速プロセッサー

知財情報

主な知財ホルダー:マンチェスター大学、アンドレ・ガイム教授、コンスタンチン・ノボセロフ教授

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

知財ハンター

松﨑 啓 Hiraku Matsuzaki
Assistant Producer / Konel Inc.

1994年熊本生まれ。修士(工学)。大学院在学中に留学したテキサス大学オースティン校ではPRを学んだ他、現地の半導体メーカーにてリサーチャーとしてインターンシップを経験。メディア表現領域に関心を持っている。


知財ライティング: 都淳朗