理論上でしか存在しなかった物質を生成した驚きの製法
グラフェンは60年以上前から研究されてきたが、安定した生成方法がなく理論上でのみ存在する物質であった。マンチェスター大学のアンドレ・ガイム教授、コンスタンチン・ノボセロフ教授は、粘着テープとグラファイト(黒鉛)である鉛筆の芯で遊んでいたところ、偶然グラファイトからグラフェンを引き剥がすことに成功。その製法を確立し、グラフェンの物性を研究して2010年にノーベル物理学賞を受賞した。
規格外の特性
グラフェンは薄い、軽い、強い、しなやか、透明という5つの特徴を持つ。具体的には、原子1層分の厚さで、どんなシートよりも薄く軽い。面内の共有結合が非常に強く、強靱でしなやか(面内の引っ張り強度はダイヤモンドより高い)。可視光に対して透過率98%とほぼ透明。
優れた伝導性
不純物や欠陥が入りにくい高い結晶性をもち、荷電粒子の移動速度はシリコンよりも高い。室温での熱伝導率と電気伝導率は、銅と同等かそれ以上で、分子1個の吸着過程すら電気伝導度の変化として読み取ることができる。
エネルギーを生むブラウン運動
自然界には存在しないグラフェンが成り立っているのは、炭素原子が不規則な振動を伴うブラウン運動を常に行っているからである。この動きから電流を発生させることで、環境に優しいエネルギーを大量に生み出す可能性を秘めている。