No. 196 主体的に他者と関わる大切さを教えてくれるぬか床ロボット

NukaBot

NukaBot(ぬかボット)は、人と対話するぬか床ロボット。人がぬか床に話しかけることでぬか床のコンディションを確認し、ぬか床は手入れを催促することでインタラクティブなコミュニケーションが生まれ、対話を通して発酵と腐敗の絶妙なバランスが実現する。ぬか漬けは人が手でかき混ぜることで味に変化が出るが、かき混ぜるタイミングや頻度などは感覚に頼るところが大きかった。NukaBotは糖分やpH、乳酸菌などを測定するセンサーとスピーカーを内蔵しており、発酵具合のモニタリングや手入れの催促をしてくれる。日々、データの蓄積とアップデートを重ねており、ぬか床が自動で発酵に適した環境に移動する機能の実装も見込まれている。このシステムは将来的にオープンソース化することを目指しており、ぬか漬けという日本を代表する伝統食を通して自然の複雑なシステムと人が対話する機会を生み、人が社会で生きる上でのあり方や相互作用について考え直すプロダクトとなることが期待されている。

コミュニケーションをとることができるぬか床

なぜできるのか?

ぬか床の状況のモニタリング

内蔵したセンサーでpH(水素イオン指数)ORP(酸化還元電位)、二酸化窒素、エタノール、アンモニアといったガスなどを測定しており、発酵状態を計算している。発酵時に酸性となるぬか漬けのpHを測定し、微生物の代謝をORPから推測することができ、ぬか床が放つ熟成香をガスから判定して熟成度の指標を得ている。

味を評価してユーザーの好みに最適化

ぬか漬けの官能評価(人間の感覚を用いて製品の品質を判定する検査)をもとに選択した味に変化を及ぼすセンサーデータから、味の近似的なスコアを予測することができる。現在は主観的な評価に基づいたセンサーデータの選択をしているが、NukaBotごとにユーザーの官能評価から自動で計算するようにすれば、個人の好みを反映したぬか漬け作りをすることができる。

かき混ぜる行為を自動化しない理由

人間の皮膚にある常在菌がぬか漬けの味に影響を与えているため、機械ではなく人の手でかき混ぜることが重要。菌の量には個人差があり、それがぬか漬けの味に多様性を与えている。加えて、対話を通して自発的に手入れをする仕組みを作ることで、ぬか床に感情移入をしてユーザーが愛着を持てるようにすることを目指している。

かき混ぜることで発酵と腐敗のバランスをとる

ぬか床は毎日かき混ぜることでpHが下がっていくが、pHが十分に低い状態でもかき混ぜることを怠っていると腐敗してしまう。ぬか床をかき混ぜるとき、空気に触れている表面のぬかが底に沈められることで好気性菌(生育のために酸素を必要とする菌)の生育が抑制され、弱嫌気性(無酸素の状態で生育する性質)の乳酸菌が活性化している。pHが下がって好気性代謝菌と乳酸菌などの発酵菌がせめぎあって、発酵と腐敗を行き来することでぬか漬け独特の風味が生まれる。

相性のいい分野

ダイバーシティ
作り手ごとに味が違うぬか漬けを通して個人を認め合う社会
ヘルスケア
ぬか漬け作りで脳を活性化しロボットとのコミュニケーションで孤独感をへらす高齢者向けプロダクト
オフィス
社内のぬか漬けに適した場所を見つけて自動で移動しながら、たくさんの人にかき混ぜてもらうことで生まれる未知の味と新しいコミュニケーション

知財情報

主な知財ホルダー:ドミニク・チェン、小倉ヒラク、ソン・ヨンア

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

知財ハンター

小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。


知財ライティング: 都淳朗