No.855

2024.06.07

AIを活用し、恋愛感情を味で表現した蒸しパン

恋AIパン

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概要

「恋AIパン(れんあいぱん)」とは、AI技術を用いて恋愛感情と食品を紐づけ、味を表現した蒸しパン。恋愛番組と食品名を含む曲の歌詞分析から、感情の傾向の類似性を捉え、恋愛感情を表す食品を抽出してパンの味に反映している。若年層の新規顧客・認知獲得を目指し、近年指摘されている若者の「恋愛離れ」に資する商品として開発した。「運命の出会い味」「初めてのデート味」「やきもち味」「涙の失恋味」「結ばれる両想い味」と、恋愛シーンごとに5種類の味を展開している。感情を呼び起こす食品・飲料などの展開に加え、ヘルスケアやエンタメなどの領域での活用も期待される。

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なにがすごいのか?

  • AIを用いて恋愛感情と食品を紐づけ、味を表現

  • 恋愛番組の会話データと約100万曲の歌詞データをベースに感情傾向を分析

  • AIの音声認識技術とデータ意味理解技術で感情を可視化

なぜ生まれたのか?

創業155周年を迎える木村屋總本店とNECの共同開発で誕生した。木村屋は、主な販売チャネルが百貨店やスーパーで、若年層の新規顧客や認知の獲得が課題だった。一方のNECはこれまで、食品メーカーや製菓店などと連携し、AI技術を用いて、身近な問題の解決や新たな価値提供につながる商品の開発を手がけてきた。そうした背景からタッグを組み、若年層をターゲットとした新たな価値を提供する商品の検討を始めた。若年層を調査する中で、近年指摘されている「恋愛離れ」に着目し、恋の味を再現したパンの開発を推進。「恋がしたくなる味。」と銘打った5種類の恋の味を体験できる「恋AIパン」を開発した。

なぜできるのか?

会話と歌詞データを活用した感情の傾向分析

最先端AI技術群「NEC the WISE」を活用し、感情の傾向を分析している。会話データには、ABEMAの人気恋愛番組「今日、好きになりました。」を活用。AIの音声認識技術を用いて、恋に揺れ動く現役高校生の会話を15時間分テキスト化した。それをデータ意味理解技術で、出会いや告白など、恋愛シーンごとの会話文に32個の感情ワードと相関を表した感情スコアを「驚嘆」「楽観」「恐怖」「喜び」「敬愛」の5項目で付与し、傾向を可視化した。
食品に関わる感情の分析には、約100万曲の日本語の歌詞データベースから、183種類のフルーツやスイーツなどの食品名を含む約3.5万曲を活用。食品を含む歌詞に同じく感情スコアを付け、食品イメージが持つ感情の傾向を可視化している。

感情の傾向の類似性にもとづいた味の構築

恋愛番組の会話と歌詞データから可視化した、感情の傾向の類似性をもとに、パンの味を構築している。AIを用いて、似ている恋愛シーンと食品を紐づけ、恋の感情を表現する食品上位50種を抽出。その中から、木村屋の蒸しパン開発担当者が、相性の良い食品の組み合わせを選定して、恋の味を表す蒸しパンを構築した。味だけでなく色の表現にもこだわり、素材の味と感情のイメージがつながる色合いにしている。

AIを用いた商品開発の知見・実績

NECが取り組んできた、AIを用いた商品開発の実績・知見を活用している。身近な問題の解決や新たな価値の提供に力を入れており、例えば2020年には、世代間のコミュニケーションを促すため、AIで雑誌記事から20代~50代の世代の特徴を分析して味に反映したクラフトビール「人生醸造craft」を開発。2022年には、AIで子どもたちが苦手な野菜と相性の良い食材を見つけて組み合わせ、苦手を美味しく・楽しく克服する「AIのプリン」を開発している。そうした実績のもと今回の開発に至っている。

相性のいい産業分野

製造業・メーカー

感情の喚起や補足ができる食品や飲料の開発

食品・飲料

感情を高めたり安定させる健康食品・メンタルケア飲料の開発

医療・福祉

思い出や過去の感情を呼び起こすヘルスケアに活用

アート・エンターテインメント

作品と共に感情を味わうアート展示やイベント企画での活用

ロボティクス

感情の味を調味できる料理ロボットの開発

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 日本電気 株式会社